スポーツ選手の運動量は、一般人に比べて数倍ともいわれています。そのため、食事による栄養補給はとても大切です。スポーツ選手の栄養補給といえば、プロテイン(たんぱく質)を思い浮かべる人は多いかと思います。それは、「プロテインは筋肉をつけるのに良い」というイメージがあるためでしょう。

しかし、そのプロテインを効率よく体内に取り込むためにはDHA・EPA(魚油)が必要です。ここでは、DHA・EPAの摂取がスポーツ能力にどのように関係するのかを確認していきます。

スポーツ能力の向上に必要な筋肉

「スポーツ能力の向上のためには、筋肉を鍛えることが重要だ」ということは広く認知されています。実際どのようなスポーツにも、トレーニングの中に「筋トレ」が取り入れられていると思います。

私たちの身体に備わっている筋肉は3種類あり、自分の意思で動かすことのできる「横紋筋(骨格筋)」と自分の意思では動かせずに内臓などを動かしている「心筋」「平滑筋」に分けられます。

通常の生活の中で意識的に動いたり、スポーツをしたりするときに使われる筋肉が「横紋筋」です。横紋筋は骨にくっついている筋肉であり、横紋筋が収縮することにより関節や骨格を動かしています。

また、細長い筋細胞(筋繊維)がたくさん束になることで横紋筋が構成されています。筋細胞がそうめん1本だとすると、横紋筋はそうめんが束になっている状態です。ちなみに実際の筋細胞の太さはそうめんよりも細いです。

筋細胞を構成する筋原線維と筋形質

そしてさらに、筋細胞の中には、数千本の伸縮性のある「筋原線維」と液体状の「筋形質」という組織があります。筋原線維同士の隙間を埋めているのが筋形質であり、筋原線維には筋形質からエネルギーが送られます。

筋肉が力を入れたときに硬くなるのは、筋原線維によるものあり、それが強い筋力につながります。しかし、持久力に長けているのは筋形質です。つまり、スポーツ能力向上には、筋原線維にも筋形質にも栄養を満たしてトレーニングすることが必要になります。

筋トレをすると筋肉の量が増えると思われがちですが、筋細胞の数は成長期以降増えません。筋トレや普段の活動量を増やして「筋力をつける」ということは、「筋原線維と筋形質を肥大させ、筋細胞の質を高める」ということを指します。

筋原線維と筋形質の肥大は栄養摂取とトレーニングでなされますが、筋細胞の質を高めるとは、どのような状態を指すのでしょうか。

「優れたアスリートほど筋肉の質は柔らかい」といわれています。つまり、筋細胞の質を高めるとは、「普段は柔らかい筋肉であり、必要なときにしっかり伸縮ができる状態」にすることです。そのような筋肉はケガをしにくく、傷が付いたときは修復しやすい状態を作り出します。

筋肉を柔らかい状態にするためには、筋肉を使った後に早く元の状態に戻る状態が理想とされます。スポーツの後もいつまでも筋肉が硬い状態が続くということは、良い筋肉とはいえません。

そのため、筋肉の質を高めるためには、使用した筋肉を柔らかい状態に戻す回復力が重要になります。回復力をつけるには、普段の食事や生活習慣が大きく関係します。

また、筋肉を覆っている膜(筋膜)を柔軟にすることも筋細胞の質の高めるポイントになります。筋原線維の質が良くても筋膜が硬い状態だと伸縮しにくくなってしまうからです。

スポーツ能力の向上に必要な神経

スポーツに必要な筋肉の質について述べましたが、横紋筋は自分の意思で動かすことができるため、筋肉に情報を伝えることもスポーツ能力の向上には必要です。

脳からの指令と筋肉の動かし方・タイミングにズレが生じてしまったら、スポーツで良い結果が残せません。

例えば、サッカーの試合で「パスによりボールをキャッチし、ドリブルを行う」とき、体内ではたくさんの情報伝達がされています。その流れは以下のようになります。

1.ボールや動いている人を見る

2.「ボールがきた」という情報が目から脳に伝わる

3.「ボールの方向へ走ってドリブルをしろ」という情報が脳から各筋肉に伝わる

4.各筋肉が伸縮し、走り出す

こうした流れにより、実際の動きにつながっていきます。

スポーツ能力が高い人に対して、よく「運動神経が良い」「反射が早い」などという言葉が使われますが、それは、上のような流れの情報伝達の正確さや速さによるものなのです。そのため、目などの感覚器から脳への情報伝達、脳から筋肉への情報伝達をスムーズにすることが重要となってきます。

また、スポーツ選手には本番に強い精神力をもつことも必要とされます。緊張により普段の練習成果が発揮できなかったり、本番前に体調を崩してしまったりしては試合で良い結果が残せません。

緊張に左右されない精神力をつけるためには、脳内で分泌される緊張や不安系の物質を調整できる身体にしておくことが必要です。

緊張や不安を引き起こす物質は脳内で作られるノルアドレナリンという神経伝達物質ですが、これは体内に亜鉛というミネラルが不足することで作られやすくなります。つまり、亜鉛などの栄養素不足によって、緊張や不安をコントロールしにくくなるということです。

亜鉛は魚介類に多く含まれています。また、加工食品などに含まれている食品添加物には亜鉛の吸収を阻害するものがあります。

魚介類の摂取を心掛けるとともに、加工食品などを控えることを心掛けましょう。そうすれば、スポーツでここ一番というときの緊張に耐えられるようになります。

筋肉の質を高める栄養

では、ここからはスポーツ能力向上のために必要な栄養について述べていきます。筋肉といえばたんぱく質(プロテイン)というイメージが強いです。しかし、当然たんぱく質だけ補えば良好の筋肉が作られるというわけではありません。

質の良い筋肉を作るには、筋細胞に栄養を満たす必要があります。また、力を入れたいときにしっかり伸縮し、そのほかのときには素早く元の柔軟な状態に戻るという回復力も重要になります。

筋細胞に満たしたい栄養素は、糖質・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルなど全ての栄養素です。身体の中では栄養素はチームでしか効果を発揮できません。たんぱく質だけを摂取していても、たんぱく質が筋細胞にアミノ酸として届くには、ほかの栄養素の作用が必須です。

他にもたんぱく質を胃で分解するには消化酵素が必要ですし、腸の粘膜が損傷しないためにはビタミン・ミネラル・脂質・乳酸菌が必要です。胃酸が出にくい胃や、粘膜が炎症を起こしている腸ではせっかく食べたたんぱく質も吸収されません。

さらに、腸から吸収された栄養素は血液に乗って筋細胞まで届けられます。そのため、血液がスムーズに流れることも、質の良い筋肉を作るには大切になります。

特に血液をスムーズに流すためには、DHA・EPAが欠かせません。DHA・EPAとは魚の油のことです。DHA・EPAは血管をしなやかに保ち、血液中の赤血球を柔軟にすることで血液が流れやすい状態を作ります。そのことにより、各栄養素が筋細胞まで運ばれやすくなります。

さらに、DHA・EPAは腸粘膜などに起きている炎症を修復します。栄養を筋細胞にしっかり取り込ませるには、腸粘膜の炎症もあってはなりません。

また、筋肉を柔らかい状態に保つには、筋細胞の老廃物をしっかり排出し、有効な栄養素をどんどん取り入れられる状態が理想です。そのためには、筋細胞の膜を柔軟にする必要があります。筋細胞の膜を柔軟にする油がDHA・EPAであり、固くしてしまうのがサラダ油・加工食品などの含有油です。

筋細胞の膜は栄養を取り入れたりする機能のほかに、脳からの情報を受け取る組織でもあります。情報を素早くキャッチすることは、スポーツでの反射能力に大きく関係します。

脳からの情報をしっかりキャッチし、筋細胞を正確に動かすためにも、DHA・EPAを魚やサプリメントから摂取し、サラダ油の過剰摂取は避けると良いです。

このように、質の良い筋肉を作るには、あらゆる栄養素が必要です。「ご飯・魚・肉・卵・大豆製品・発酵食品・野菜・海藻・果物・きのこ・種実」と、さまざまな食品をまんべんなく食べるようにしましょう。

プロテイン飲料は必要か

筋トレをする際にプロテイン飲料を飲む人は多いです。プロテインとは、消化吸収しやすいアミノ酸を素早く体内に入れることができる栄養補助食品です。本来であれば肉や魚からたんぱく質を摂取し、胃で消化されてアミノ酸となるわけですが、プロテイン飲料はその消化作用が不要な状態のものです。

しかし、結論から述べますと、肉や魚や卵などの食事からたんぱく質をしっかり補うことができるのであれば、プロテイン飲料は特に飲む必要ありません。食事から摂る肉や魚には、たんぱく質のほかにビタミンやミネラル、脂質が含まれています。筋細胞に必要な栄養をまとめて摂れるのです。

ただ、一般の人に比べ、スポーツ選手はたんぱく質の摂取目安量が多くなります。消費される栄養が多量であるため、補う栄養もたくさん必要になるということです。

有名なスポーツ選手は1日に5食や6食食べる人もいます。それだけの栄養を食べ物から取り入れるのが困難だという場合は、プロテイン飲料を利用する手段もあります。しかし、プロテイン飲料を選ぶ際は注意が必要です。

プロテイン飲料購入時は、原材料をしっかり確認し、大豆であれば遺伝子組み換えの原材料が使われていないか、余分な甘味料や添加物が入っていないかなど注意して選ぶようにしましょう。

また、筋トレをしている人であれば一度はBCAA(分岐鎖アミノ酸)という言葉を聞いたことがあると思います。BCAAとは、アミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンのことを指し、筋肉を構成するアミノ酸の35%を占めるとされています。

しかし、BCAAは脳内に必要なアミノ酸の吸収を阻害してしまいます。そのため、BCAAばかり重視しているプロテイン飲料ではなく、アミノ酸がバランス良く含まれているものを選ぶことをお勧めします。

瞬発力系のスポーツに必要な栄養

ここまでスポーツ全般に当てはまる筋肉について述べてきました。しかし、スポーツは種別によって身体の使い方が違います。例えば、野球や短距離、柔道などの瞬発系のスポーツに関しては、タイミングや瞬発的に出せるパワーが大事になります。

つまり、瞬発力系のスポーツには、「すばやく反応できる反射神経」と「強く伸縮できる筋肉」が必要です。反射神経を鍛えるには、トレーニングをすることと、目・脳・筋肉の間の情報を受け取りやすくする柔軟な細胞膜を作ることがポイントです。

上述の通り、細胞間の情報伝達を行いやすくする細胞膜は「構成成分にDHA・EPA(魚油)が多い」という細胞膜です。細胞膜は油で作られていますが、油の中でもDHA・EPAが細胞膜の成分として使われている方がいいのです。

また、瞬発力系のスポーツは筋肉への負荷が大きいです。そのため、マラソンなどの持久力系のスポーツに比べ、筋肉の材料となるたんぱく質やビタミンが多量に必要となります。

通常成人は1日体重1kgに対して1gのたんぱく質が必要であり、体重60kgの人であれば60gのたんぱく質が必要とされています。それに対して、瞬発力系のスポーツをする人は体重1kgあたり2gのたんぱく質が必要とされています。体重60kgの人であれば120gのたんぱく質量です。

1日60gのたんぱく質を補うには、「豚肉100g、魚一切れ、卵1個、豆腐・納豆1パック」の摂取が必要です。そのため、瞬発力系のスポーツをする人は一般成人の倍のたんぱく質摂取が必要ということになります。毎食の食事でしっかりとたんぱく質を補うことを意識しましょう。

持久力系のスポーツに必要な栄養

瞬発力系のスポーツに比べ、持久力系のスポーツにはマラソンや水泳などがあります。ちなみに、サッカーは、持久力と瞬発力の両方が必要なスポーツになります。

持久力系のスポーツは、長時間使われた身体の回復力、長く活動できるエネルギーの蓄えが必要です。エネルギー源となりやすい栄養素は糖質(ご飯・芋・果物・小麦製品)です。砂糖も糖質に含まれますが、砂糖については炎症を起こす原因となるため、ご飯粒や果物、芋類などで積極的に糖質を補いましょう。

また、疲労からの身体の回復には糖質以外にもあらゆる栄養が必要になります。糖質以外にもまんべんなく食材を食べることで、栄養素はそれぞれ補強し合って回復しやすい身体作りをします。

スポーツ能力向上とDHA・EPA

ここまで、スポーツ能力向上に必要な筋肉を効率よく働かせる栄養について述べてきました。スポーツ能力向上のためには、あらゆる栄養素が必要です。その中でも、DHA・EPA(魚油)は、筋肉に栄養を送り込むのにも、反射神経を高めるのにも、欠かせないことを確認してきました。

またスポーツ選手は、全身の細胞に対して栄養だけでなく、酸素も一般人より多く必要です。スポーツをすると、筋肉などの組織には通常以上の酸素がなければいけないのです。

そのため、血流量の増加と赤血球による酸素運搬能力の高さが求められます。そして、この2つの役割を果たし、筋肉などの組織に酸素を送りやすくするのがDHA・EPAになります。

組織に酸素が届きやすくなると、筋肉も働きやすくなります。また、それだけではなく、肺の細胞にも血液が多く回るため、心肺機能の向上にもつながります。

スポーツ能力向上にはたんぱく質の摂取というイメージが強いです。ただ、スムーズに栄養や酸素を筋細胞まで運ぶためには、DHA・EPAの摂取を心掛けることが重要になります。

スポーツ選手が避けたいもの

ここまで、どのような栄養を摂ればスポーツ能力向上につながるかを確認してきました。では反対に、スポーツ選手が日ごろから避けた方が良い食べ物はあるのでしょうか。

スポーツ選手は一般の人より使用するエネルギーも栄養素全般も多いです。そのため、「栄養素の無駄遣い」を少なくしたいです。

例えば、エネルギーを補うために必要な糖質や脂質は消化するときにビタミンB群を必要とします。しかし、普段から甘いものやジュースなどをよく摂るような習慣であると、それらの消費の方にビタミンB群が使用されてしまいます。

その結果、筋細胞を作ったり、エネルギー源となったりするビタミンB群が不足してしまうのです。スポーツドリンクにも糖分が多量に入っているので、水分補給として常飲するのは避けましょう。

また、反射神経を良くするために必要なDHA・EPAの働きを弱めてしまうものもあります。それは、サラダ油や加工食品の含有油脂です。サラダ油などは体内の情報伝達をしにくくしてしまうので、控える必要があります。

脂質は、肉・魚・卵・オリーブオイル・ココナッツオイル・バターなどから摂取するようにしましょう。これらの脂質であれば、DHA・EPAの働きを阻害することなく、良好な栄養源として体内で有効作用を示します。

また、スポーツ選手は睡眠不足も大敵になります。睡眠不足は体内に活性酸素を増やします。活性酸素とは、ストレスや不摂生によって生じる、体内の細胞を傷つける物質です。食べるものに気を付けていても、睡眠不足状態であると、活性酸素により栄養素の働きが阻害されてしまいます。

特に活性酸素はビタミンCを大量に消費するので、ホルモン調節などに必要なビタミンCが不足してしまいます。また、活性酸素が多い体内だと、DHA・EPAは体内で酸化されてしまいます。酸化されたDHA・EPAは血液の流れを悪くし、栄養や酸素を全身の細胞まで運びにくくします。

そのためスポーツ能力を向上させるためには、普段から睡眠をしっかりとり、ストレスをためないことも意識する必要があります。そして、活性酸素による体内の酸化を防ぐためには、抗酸化物質をより意識して摂るようにしましょう。抗酸化物質は野菜・果物・海藻・魚介などに含まれます。

同様にDHA・EPAをサプリメントから摂取する場合も、抗酸化物質が含まれているものを選ぶようにしましょう。抗酸化物質が入っているDHA・EPAサプリメントであれば、DHA・EPAの酸化を防ぐことができるからです。

まとめ

ここでは、筋肉の構造や反射神経のメカニズムからみた、スポーツ能力向上について述べてきました。スポーツ選手に必要な質の良い筋肉とは、「普段は柔らかく、必要なときにしっかり伸縮ができる筋肉」です。

そのような筋肉を作るには、たんぱく質だけでなく、あらゆる栄養素を摂る必要があります。食べた栄養と酸素を筋細胞までしっかり届けるには、血流が良いことが条件となります。そのためには、DHA・EPA(魚油)の摂取が必要となるのです。

また、脳から筋細胞に指令をしっかり受け渡し、タイミングよく身体を動かすこともスポーツ能力向上には欠かせません。そのように、体内の情報伝達をスムーズに行い、反射神経を高めるには、神経と筋細胞の膜が柔軟である必要があります。膜の柔軟性を作るためにも、DHA・EPAの摂取はポイントとなります。

スポーツで結果を残すためには、身体作りはとても重要です。食事全体のエネルギー量は一般人に比べて大幅に増えるため、食事量も増えます。このとき、せっかく努力して摂取した食べ物を有効に体内で働かせるためにも、しっかり睡眠をとることを心掛けましょう。

また、筋細胞や反射神経を作り出す貴重な栄養素をできるだけ無駄遣いしないように、加工食品や甘いものの摂取を控えましょう。ただ、どんな食べ物でも美味しいと思って食べなくては吸収もされにくくなりますので、「筋肉のための義務的な食事」は避け、食事自体を楽しむことも重要になります。