DHA・EPAの摂取源としてイワシやサンマは有名です。しかし、手間や金銭面の問題から青魚を毎日調理して食べることが難しい人は多いかと思います。

そこで「手軽に食べられる小魚からDHA・EPAが補えたら毎日簡単に摂取できる」と考えている人もいます。小魚とは、しらす・煮干しなどの魚を指します。

ここでは、「しらすや煮干しなどにどの程度DHA・EPAが含まれているか、また小魚に含まれているDHA・EPAは身体にとって有効か」について確認していきます。

しらす・じゃこ・煮干し(いりこ)の違い

しらす・じゃこ・煮干しはどれも一般的にイワシの稚魚を用いた食材です。イワシは生まれてから1~2ヶ月ほどでしらすとなり、しらすは春と秋に旬となります。しらすやじゃこは体長2.5cmまでのものが主に材料とされ、煮干しはそれ以上の大きさのものが使われます。

しらすをさっと塩茹でしたものを「釜揚げしらす」、塩茹で後に少し干したものを「しらす干し」、じっくり干して乾燥させたさせたものを「ちりめんじゃこ」と呼びます。

つまり、「(釜揚げ)しらす → しらす干し → (ちりめん)じゃこ」の順に乾燥の度合いが高くなります。ただし、この呼び方は一般的ではありますが、地域によって多少異なる場合もあります。乾燥度が低いほどやわらかく食べやすいですが、日持ちについては乾燥度が高いほど良くなります。

しらすの乾燥方法としては、茹でたしらすを日光が当たるように広げて干す「天日干し」と、機械を用いる「機械乾燥」があります。

また、煮干し(いりこ)もイワシを原料として作られます。「煮干し」と「いりこ」は同じ意味で呼ばれていますが、「いりこ」は西日本で使われる方言です。煮干しはダシとして使われたり、「つくだ煮」や「田作り」の材料として利用されたりします。

煮干しの製造方法は、次の通りです。

まず、漁獲されたイワシの稚魚は高温でじっくり煮上げられます。その後、天日干しや機械乾燥によって乾燥させますが、しらす干しの乾燥時間に比べて煮干しは長時間乾燥させる必要があります。そのため、「しらす干し、ちりめんじゃこ、煮干し」に残っている水分は、茹でる前に比べて以下の違いがあります。

水分
しらす干し 70%程度
ちりめんじゃこ 50%程度
煮干し 18%以下

このように乾燥時間の違いから、水分量にも違いがあり、煮干しの水分については日本農林規格(JAS)で定められています。当然、水分が多い方が日持ちしないため、消費期限は煮干しが一番長くなります。

下の写真は左から「しらす干し」「ちりめんじゃこ」「煮干し」となっています。

このように小魚の中でも、大きさや製造方法によって呼び名も日持ちも変わってきますが、これらの違いのポイントになるのは「乾燥時間」であることが分かります。では、乾燥時間によって水分量が違うことは分かりましたが、小魚の栄養価はどのように変わるのでしょうか。

小魚の栄養価

では、小魚の中のしらす干しと煮干しについて栄養価の違いを確認していきます。ここでの比較は、しらす干しの場合は一回に食べる小鉢分12g(大さじ2杯分)とし、煮干しの場合は一回に食べる量約20尾で6gとします。

しらす干し

(12g)

煮干し

(6g)

エネルギー(kcal) 13.6  19.9
たんぱく質(g) 2.8  3.9
脂質(g) 0.2  0.4
脂質のうちDHA・EPA(g) 0.05 0.04
カルシウム(mg) 25.2  132
亜鉛(mg) 0.1  0.4
鉄(mg) 0.1  1.1
ビタミンD(μg) 5.5  1.1
ビタミンB12(μg) 0.5  2.5

「しらす干しでDHA・EPA補給」「煮干しは栄養満点」などいわれており、しらす干しや煮干しは高栄養食品のようなイメージがありますが、一食分にすると実際はどの栄養価もそこまで豊富ではありません。

さまざまなネットやテレビなどで食品同士の栄養価が比較されるとき、ほとんどが可食部100g単位で比較されています。サバやサンマなどは一食で100g食べますが、しらす干しや煮干しを一食で100g食べることは困難です。100gの煮干しを食べようとすると、300尾以上食べないといけません。

「しらす干しのカルシウム含有量は牛乳の2倍」などと表記されていても、この場合も100g単位で比較されています。牛乳は100ml飲むのに抵抗がなくても、しらす干しは100gも食べられません。このように、栄養価が比較してある表記方法には注意が必要です。

一食分のしらす干しや煮干しの栄養価は、サバ一食分と比べるとたんぱく質は15%、脂質は2%ほどしかありません。ただ、カルシウムとビタミンDに限ってはしらす干しや煮干しは豊富で、煮干し一食分のカルシウムは牛乳一杯と同量、しらす干し一食分のビタミンDはサバ一食分の約4倍含まれています。

また、脂質として知られるDHA・EPAも一食分とすると、しらす干し、煮干し共にわずかな含有量になります。

1日に摂取するべきDHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸の目安量は2.1g(30~49歳・男性)です(厚生労働省)。それだけのオメガ3脂肪酸の量をしらす干しで補おうとすると小鉢42杯分を食べなくてはいけなくなり、さすがに無理があります。

そのため、しらす干しや煮干しはDHA・EPA含むオメガ3脂肪酸の補給源として期待できません。

上の栄養価の表から、しらす干し、煮干しでのたんぱく質や脂質(DHA・EPA)の補給は期待できませんが、カルシウムやビタミンDの補給にはなることが分かります。

ビタミンDといえば、以前は「骨を強くするビタミン」としてカルシウムの補助的なイメージしかありませんでした。しかし現在は「万能ビタミン」としてビタミンDの必要性が多く報告されています。

ビタミンDは身体中の細胞再生の信号として働きます。老化した細胞の再生、悪性細胞(がん細胞)の分裂抑制など、身体にとって良くない働きをする細胞の分裂を抑制して、新しい細胞への再生を促すのです。その結果、うつ病、肌荒れ、肥満、花粉症などあらゆる症状にビタミンDが有効的だといわれるようになりました。

普段の食生活で魚やきのこを食べない場合はビタミンDが不足している可能性が高いです。そのような場合、しらす干しなどは簡単に食事に取り入れられ、ビタミンD補給を助けてくれます。

小魚の酸化について

ここまで、しらす干しや煮干しなど小魚の違いや栄養価について確認してきました。小魚ではDHA・EPAの補給は期待できませんが、カルシウムやビタミンDは補えます。そこで、小魚を摂取する上でさらに気になることが「酸化」です。

酸化とは、物質が酸素と結びついて元の物質から性質が変わってしまうことであり、魚に含まれている脂肪酸(DHA・EPA)は酸化しやすい脂質です。他にも、サラダ油や加工食品、インスタント食品、お菓子などが酸化しやすい食品です。

魚の油(DHA・EPA)や加工食品、サラダ油などに「熱・空気(酸素)・光」の条件が加わると、脂肪酸は酸化して、それが体内に入ることにより細胞を老化・損傷させる原因となります。細胞が老化・損傷すると、肌のシミ、うつ病、アルツハイマー、生活習慣病などの症状につながります。

また、食品と同様に「私たちの体内にある酸素」でも細胞は酸化されます。身体に取り入れた酸素のうち数パーセントは細胞を酸化させる「活性酸素」に変化し、活性酸素により細胞は老化させられます。

本来、活性酸素は体内に浸入してくる病原体を攻撃する働きをするため、身体にとって必要なものですが、活性酸素が増え過ぎると良い働きをしません。活性酸素が増える原因として、ストレス、加齢、睡眠不足、運動不足、偏食、添加物や糖質の摂り過ぎなどがあります。

このように心身の健康のためには、食品の酸化と活性酸素の増え過ぎは避けるべきです。そして、しらす干しや煮干しなどの小魚は一度、加熱調理(釜揚げ)をしてから日光や機械によって乾燥させられています。食品酸化の条件となる「熱・空気(酸素)・光」の中で製造されているのです。

では食品酸化の条件下で作られている、しらす干しや煮干しはどれほど酸化されているのでしょうか。

特に煮干しは、しらす干しよりも干して空気に触れる時間が長いです。イワシの稚魚を漁獲して茹でる前までは酸化は進みません。茹でることで熱が加えられ、その後に日光や機械によって乾燥させることで、加熱された魚の脂肪酸(DHA・EPA)に酸素と光が加わり、一気に酸化は加速します。

そのため、流通している煮干しは「酸化されているDHA・EPA」が含まれていることになります。酸化された脂肪酸が含まれている煮干しは身体に良くないだけでなく、風味や味も悪いです。特に煮干しはダシとして用いられることが多いので、風味が落ちた煮干しは使い物になりません。

そのため、スーパーに売られている多くの煮干しには酸化防止剤としてビタミンEなどが添加されています。

たまに「無添加」と表記してあり、酸化防止剤が含まれていない煮干しもありますが、そういったものはDHA・EPAの酸化がだいぶ進んでいる可能性があるので避けた方が良いです。「無添加」と表記されてあると、添加物として酸化防止剤が入っているものよりも身体に良いイメージがありますが、煮干しに限っては酸化防止剤の添加が必要です。

いまでは技術が進み、煮干しを無酸素の中で乾燥させ、無酸素状態で流通まで出す方法も開発されていますが、コストが膨大にかかるため、商品として販売されていないのが現実です。

また、しらす干しは煮干しに比べると乾燥させる時間も消費期限も短いため、加熱してから空気(酸素)に触れる時間が少ないです。しかし、しらす干しやちりめんじゃこにも酸化防止剤が添加してある商品があることから、脂肪酸の酸化は多少進んでいると考えられます。

さらに、しらす干しやちりめんじゃこは、酸化防止剤以外に添加物として漂白剤やリン酸塩などが加えられている商品もあります。そのような添加物を継続的に摂取することは避けるべきです。以下の写真ではPH調整剤としてリン酸塩が含まれており、他の添加物もいくつか含まれています。

しらす干しはビタミンDなど補いやすい食品ではありますが、添加物や脂肪酸の酸化を考慮すると、「健康のために」と毎日習慣的に食べることは控えましょう。

スーパーなどでしらす干しを購入する際は、原材料を確認して、漂白剤やリン酸塩など余分な添加物が入っていないものを選ぶと良いです。

さらに、しらす干しは製造後すぐに冷凍されて商品になるものもあります。冷凍されることで酸化速度はゆるやかになるため、「冷凍しらす干し」の購入をお勧めします。

また、良質な煮干しを選ぶための目安として、「煮干しの背側が盛り上がり『くの字』に曲がっているものが、新鮮なうちに加工されたものである」とされています。逆に「腹側が盛り上がっているもの、背中が割れたり尾びれがとれたりしているものは、丁寧に加工されていないもの」とされています。

色の目安としては、青みがあり銀白色のものが良質で、黄味かかったものは酸化が進んでいます。煮干し自体の大きさでは、あまり大き過ぎると脂質がたくさん含有されており酸化されやすくなるため、保存期間が長い煮干しは小さめのものを選びましょう。

しらす干しも煮干しも購入する際は原材料や商品をしっかり確認してから購入する習慣をつけると良いです。

小魚のDHA・EPAの有効性

ここまでで確認してきた小魚の製造方法から、煮干しやしらす干しに含まれているDHA・EPAは酸化している可能性が高いことが分かります。では、小魚は食べない方が良いのでしょうか。

煮干しやしらす干しなどは、「脂質が酸化しているから」といって極端に避ける必要はありません。しかし、煮干しやしらす干しからDHA・EPAを補うことは期待できません。

現在、魚に含まれている油(DHA・EPA)の摂取が心身の健康のためには欠かせないとして、魚の摂取が注目されています。DHA・EPAは、「細胞一つ一つを正常に作用させる」「体内での情報伝達をスムーズにする」「炎症を修復する」「血液の流れを良好にする」などの働きをするため、不足するとあらゆる症状として身体に表れるのです。

そのため、厚生労働省からもDHA・EPAの1日目安摂取量(1g)と、DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸の1日目安摂取量(2.1g/30~49歳男性)がそれぞれ示されています。この目安量を補うには、サンマであれば1尾、イワシでは2尾、ブリ切り身であれば1枚を1日に摂取する必要があります。

こういった魚を毎日摂取することが難しいことから、簡単にDHA・EPA摂取をしようと考え、手軽に食べられるしらす干しや煮干しを手にする人が多いです。

しかし、上の栄養価表で確認した通り、しらす干しも煮干しも一食分に含まれているDHA・EPAは微量です。DHA・EPAの摂取としては期待できないのです。

しらす干しや煮干しはDHA・EPA摂取のためではなく、カルシウムやビタミンDなどの摂取のため、そしておかずとして美味しく味わうために購入しましょう。

DHA・EPAの摂取は新鮮な魚(サンマ・イワシ・ブリ・サケ・サバなど)から補うといいです。ただ、それらの魚料理が毎日食べられないということであれば、DHA・EPAサプリメントも摂取手段の一つです。

魚料理が苦手な場合は、DHA・EPAの摂取が期待できない小魚を代わりに食べるのではなく、サプリメントを上手に利用すると身体に必要なDHA・EPAを補えます。

煮干しダシ(いりこダシ)には栄養が含まれているのか

煮干しを「ダシを取る」ために購入している人は多いです。そこで気になるのが、煮干しでダシを取った場合のダシ汁に含まれる栄養です。

煮干しからダシを取る場合、ダシ汁の中にはうま味成分はしっかり溶け出すものの、栄養価としてどの栄養素もほとんど含まれません。そのため、煮干しの栄養を余すことなく摂り入れるには、ダシを取ったあと佃煮にしたり、煮干しをミキサーで粉末にしてからダシとしてスープに入れたりすると良いです。

いりこでダシを取ることで味噌汁にDHA・EPAが含まれたり、カルシウムなどの栄養価が一気に上がったりすることはありません。しかし、化学添加物で作られたダシとは違うしっかりとした旨みを感じられます。

栄養素のためではなく、自然本来のダシの旨味を感じられる舌を形成するためにも、いりこや昆布などからダシをとる生活を送りましょう。

小魚のお菓子について

「魚不足の解消に」と小魚を用いられているお菓子は人気があります。特に「小魚アーモンド」と呼ばれている、ローストしたアーモンドと甘辛く味付けした小魚が入っているお菓子は、学校給食などにもよく出され、世代を超えて人気です。

そのような小魚のお菓子は、ケーキやスナック菓子など砂糖や植物油脂がたっぷり使用してあるお菓子に比べると断然健康的です。また、小魚はカリカリした食感に仕上げてあるため、よく噛む必要があり、顎の強化にもつながります。

しかし、小魚のお菓子からDHA・EPAやビタミン・ミネラルなどの栄養素の摂取は期待できません。お菓子で食べられる小魚の一食分は少量であり、食べ過ぎると味付けで用いられている糖分や塩分の摂り過ぎになります。

小魚のお菓子から栄養素の摂取はできなくても、顎の強化ができる健康的なお菓子であるため、おやつの一つとして取り入れていきましょう。

まとめ

ここでは、しらす干しや煮干しなど小魚の製造方法や栄養価について確認してきました。しらす干しや煮干しには製造段階で「茹でてから乾燥させる」工程があります。その工程により、しらす干しや煮干しに含まれる脂肪酸(DHA・EPA)は酸化が進んでしまいます。

しかし、そもそもしらす干しや煮干しの一食分に含まれているDHA・EPA量は微量なため、そこまで酸化の心配をする必要はありません。しらす干しや煮干しは、DHA・EPA摂取のためではなく、おかずの一品として味を楽しみ、栄養素としてはカルシウムやビタミンDの補給を期待しましょう。

同じように、煮干しを用いたダシやお菓子についても、DHA・EPA摂取は期待できないため、風味や食感を楽しむようにすると良いです。

DHA・EPAを摂取したいのであれば、新鮮な青魚などの魚料理やサプリメントなどしっかり含有されているものから摂取するようにしましょう。