DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)を健康のためにサプリメントで摂取している人は多いです。DHA・EPAは魚に多く含まれる脂肪酸ですが、脳の神経伝達や血液の健康のために効果的であるとされ、高コレステロール予防やうつ病、アルツハイマー予防のためなどに摂取する人気のサプリメントです。

しかし、DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)自体が非常に酸化されやすい性質を持っているため、サプリメントの酸化問題が気になる人は多いかと思います。ほとんどのDHA・EPAサプリメントは酸化防止のために、抗酸化剤(ビタミンEなど)を添加されています。

そこで気になるのが酸化防止剤の量です。酸化防止のために含まれているビタミンEなどは、どれほどの量が配合されていればDHA・EPA酸化の心配がなくなるのでしょうか。

ここでは、「どれほどのビタミンEが含有されていれば、DHA・EPAの酸化が防げるのか」について、魚の場合、サプリメントの場合とそれぞれ確認していきます。

魚に含まれるDHA・EPAとビタミンE

DHA・EPAは魚に多く含まれている脂肪酸であり、オメガ3脂肪酸に分類されます。オメガ3脂肪酸には、DHA・EPAのほかにαリノレン酸も含まれます。αリノレン酸はナッツ、亜麻仁油、エゴマ油などに多く含まれています。

それらオメガ3脂肪酸は吸収されると、体内では細胞の膜や血管内の壁、赤血球の膜などに運ばれ、身体にとっては重要な働きをします。

例えば、細胞膜を構成することで、細胞内と外を分けるドアの役割をします。細胞の膜が正常な働きをすることで、細胞内にスムーズに栄養や酸素が運ばれ、不要な物は外へ排出できます。

また、細胞同士の情報伝達も膜の状態が鍵を握ります。細胞同士の情報伝達がスムーズにいくことで、感情や集中力、やる気をコントロールでき、心の健康につながります。

さらに、血管内の壁や赤血球の膜をオメガ3脂肪酸がしなやかにすることで、血液の流れは良好になります。

このように、オメガ3脂肪酸は血液の流れや細胞の働きを良好に保つために、細胞膜上に多く存在しているのです。

また、オメガ3脂肪酸は身体で起きた炎症を修復する働きもします。体内に炎症が起きた場合は、生体膜からオメガ3脂肪酸が切り離され、炎症が起きている場所に行き、炎症を終息させます。

こういったオメガ3脂肪酸の働きがあるため、細胞は正常に働くことができ、私たちは健康的に生きていくことができます。しかし、オメガ3脂肪酸は非常に酸化されやすい脂肪酸であるため、細胞膜に存在するオメガ3脂肪酸の酸化を防がなければ、細胞は逆に働きにくくなってしまいます。

脂肪酸の酸化は、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)が既に酸化されている状態の魚料理を食べたり、体内の活性酸素(細胞を傷つける酸素)によってオメガ3脂肪酸が酸化されたりすることで起こります。

酸素・熱・光によって脂肪酸は酸化するため、加熱調理してから時間が経っている魚料理は、すでに脂肪酸が酸化していることになります。

酸化された状態で細胞膜や血管内にオメガ3脂肪酸が存在していると、良好な細胞膜や血管しての機能は果たせなくなり、膜によって守られていた細胞や血液は働きにくくなります。その状態が老化や病気へと導きます。

細胞膜の酸化とは、イメージでいうと、細胞のドアがさびついてしまうことで開け閉めしにくくなり、細胞が働くために必要な栄養や酸素が入らなくなるということです。

そこで、細胞膜に存在するオメガ3脂肪酸の酸化を防いでくれる成分が必要になってくるのです。その成分の代表的なものがビタミンEです。ビタミンEの抗酸化作用のメカニズムとして、直接細胞膜に入り込み、脂肪酸の抗酸化に働きかけることができます。

海や川を泳いでいる魚には、DHA・EPAが多量に含まれており、魚の体内でそれらが酸化しないようにビタミンEが含まれています。

下の表では、魚の種類によってオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の含有量の違い、さらには含まれているビタミンEの違いをまとめています。また、魚の中にはオメガ3脂肪酸のほかにオメガ6脂肪酸も含まれています。

※脂肪酸の中で酸化しやすい種類はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸であるため、オメガ6脂肪酸の含有量も記載します。表中のそれぞれの含有量は魚可食部100g当たりの数値です。

魚種 DHA(mg) EPA(mg) オメガ6脂肪酸(mg) ビタミンE(mg)
イワシ 870 780 280 2.5
さんま 1600 850 510 1.7
さば 970 690 430 1.3
さば水煮缶 1300 930 300 3.2
紅サケ 480 270 110 1.3
タラ 42 24 10 0.8
赤魚 160 41 40 3.4
マグロ(赤身) 120 27 30 0.8
ブリ(養殖) 910 450 1080 4.6

このように魚の種類によって、どのような脂肪酸が多く含まれているのかが違います。

マグロはDHA・EPAが豊富なイメージがありますが、脂身(トロ)に比べて赤身にはあまり脂肪酸が含まれていません。ブリは育てられるエサにもよりますが、天然ものより養殖ものの方がオメガ6脂肪酸は多くなる傾向があります。

魚に含まれているビタミンEもそれぞれの魚で含有量が違います。「オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸が多い魚ほどビタミンEの含有量も多い」という傾向がありますが、赤魚などの例外の魚もあります。

魚の脂肪酸の酸化を守るビタミンE量

魚の種類によって含まれる脂肪酸やビタミンEの量が異なることを確認しました。では、酸化されやすい脂肪酸に対してどれほどのビタミンEが含まれていれば、脂肪酸の酸化を守れるのでしょうか。

それぞれの脂肪酸1gにつき必要だとされるビタミンE量は以下の通りです。

脂肪酸 ビタミンE量(mg)
リノール酸(オメガ6脂肪酸) 0.6
γリノレン酸(オメガ6脂肪酸) 0.9
アラキドン酸(オメガ6脂肪酸) 1.2
EPA(オメガ3脂肪酸) 1.5
DHA(オメガ3脂肪酸) 1.8

リノール酸やγリノレン酸、アラキドン酸とは、オメガ6脂肪酸の仲間です。それぞれの脂肪酸の酸化防止に必要とされるビタミンE量は脂肪酸の構造によって違ってきます。

それぞれの脂肪酸は鎖のように長い構造をしていますが、「その鎖の中に弱い(酸素と結合しやすい)箇所が何カ所あるか」によって、必要なビタミンE量が決められています。

リノール酸は脂肪酸構造の中に酸素と結合されやすい箇所が2個あるのに対し、DHAは6個あります。そのため、DHAの方が酸化から守るために必要なビタミンE量が多くなるということです。上の表では、上(リノール酸)から下に向かって順に酸素と結合しやすい箇所が多くなることが分かります。

このように構造上、オメガ3脂肪酸のDHA・EPAは最も酸化されやすい油であり、ビタミンEが大量に必要になる油であるのです。

例えばイワシで必要なビタミンE量を計算してみましょう。

イワシ(100g)に含まれているDHA量は0.87gであるため、必要なビタミンEは0.87×1.8=1.57(mg)です。EPA量は0.78gであるため、0.78×1.5=1.17(mg)です。イワシに含まれているオメガ6脂肪酸(0.28g)はγリノレン酸が多いため、ビタミンE量0.9(mg)で計算すると、酸化防止に必要なビタミンE量は0.28×0.9=0.25(mg)になります。

イワシに含まれているオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の酸化防止に必要なビタミンE量を合計すると、1.57+1.17+0.25=2.99(mg)になります。しかし、この数値は必要最小量の数値であり、体内での酸化のことも考慮すると、この数値の2~3倍は必要であるとされています。

もともとイワシ自体には2.5mgしかビタミンEが含まれていないことが上の表から読み取れます。そのため、イワシを食べた際に体内で脂肪酸の酸化を防ぐためには、イワシを食べただけではビタミンE量が不十分であることが分かります。

ビタミンEは魚だけでなく、緑黄色野菜やアボカドにも含まれています。魚を食べるときに、そういった野菜などを共に食べなければ、せっかく身体に良好な作用をするDHA・EPAが細胞に対して有害物となってしまいます。魚と緑黄色野菜はセットで摂取するように意識しましょう。

DHA・EPAサプリメントに含まれるビタミンE

魚に含まれているビタミンEと同じように、DHA・EPA(魚油)サプリメントでも抗酸化に必要なビタミンE量が計算できます。

例えば1粒のサプリメントにDHAが250mg、EPAが350mg含まれているものがあったとします。上の表からこの1粒の酸化防止が期待できるビタミンE量を計算すると、「(1.5×EPA量)+(1.8×DHA量)」で表されます。

つまり、(1.5×0.35)+(1.8×0.25)=0.975(mg)と分かります。この数値に安全性のための2~3倍を考慮すると、1粒当たり2.9mgのビタミンEが酸化防止剤として添加されていれば安心ということが分かります。

さらに、DHA・EPAサプリメントの原料となる魚(サバやイワシなど)にはもともとオメガ6脂肪酸も含まれているため、それらの酸化防止も考慮しなければなりません。そのため、2.9mgよりも多くビタミンEが含まれているものを選ぶとより安心になります。

このように、DHA・EPAサプリメントには、パッケージなどに各脂肪酸の含有量が記載してあるものが多いため、そこから必要なビタミンE量は計算できます。自分の健康のためにお金を出してサプリメントを購入するのであれば、より効果を感じられるように、酸化防止について注意をする必要があります。

パッケージに脂肪酸含有量、正確な原材料名などが記載されていないサプリメントは、中身の安全性に不安が大きいため、避けた方が良いです。

また、オメガ3脂肪酸のサプリメントの中には、亜麻仁油やエゴマ油サプリメントなどもあります。亜麻仁油やエゴマ油に含まれるオメガ3脂肪酸はαリノレン酸です。αリノレン酸の酸化を防ぐために必要なビタミンE量は、上の表のγリノレン酸と同じ量です。

オメガ3脂肪酸をサプリメントで摂取する際は、含有量を確認した上で、必要なビタミンE量を確かめてから購入すると、よりサプリメントの効果を実感できます。

ビタミンEの働きを助けるビタミンC

ビタミンEと同じようにビタミンCも抗酸化ビタミンとして有名です。しかし、ビタミンCは直接的に脂肪酸の酸化を防ぐ働きをするわけではありません。

ビタミンEは体内で活性酸素から酸化されそうになる脂肪酸を守ることで、細胞のガードマン的な働きをします。ただ、ビタミンEはガードマンとしての働きを終えると、抗酸化力をなくしてしまいます。

そこでビタミンEを助けるのがビタミンCなのです。自身がダメージを受けることで脂質の酸化の身代わりをしたビタミンEに、ビタミンCがパワー(電子)を与えることでビタミンEはまた細胞のガードマンとして働くことができます。

そのため、ビタミンEとビタミンCはセットで摂取することで、より細胞は酸化から守られるということになります。ビタミンCは野菜や果物に多く含まれていますが、水溶性ビタミンであるため、野菜を茹でたり煮たり調理することでビタミンCは流出してしまいます。

野菜をスープにして流れ出た栄養素ごと摂取したり、蒸したりして栄養素のビタミンCの流出が減るように、調理にも工夫しましょう。

また、オメガ3脂肪酸のサプリメントについても、ビタミンEと共にビタミンCも含有されているものを選ぶと、より酸化の害を減らすことができます。

DHA・EPAサプリメントに含まれているセサミン・アスタキサンチンなど

DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)サプリメントには、酸化防止剤としてビタミンE以外にもセサミンやアスタキサンチンなどが含有されているものもあります。

セサミンは胡麻に含まれている成分、アスタキサンチンは甲殻類やサケ、オキアミなどに含まれている赤色成分であり、共に抗酸化物質です。

これらの成分もDHA・EPAの酸化防止に効果的なのでしょうか。

ビタミンEが細胞膜での抗酸化作用をするのに対し、セサミンは肝臓での酸化を防止しているとされています。セサミンは胃腸で分解されない成分であるため、直接肝臓まで運ばれます。そのため、セサミンは肝臓での抗酸化作用に優れています。

そのため、オメガ3脂肪酸サプリメントの酸化防止剤としては、セサミンだけでなく、ビタミンE、ビタミンCも入っているとより安心です。

また、アスタキサンチンはビタミンEと同じように細胞膜の酸化防止剤として働きます。DHA・EPAの酸化防止には有効だといえます。アスタキサンチンはサケやエビなど赤色の魚介類を食べない限り、普段の食事では補えない成分です。

アスタキサンチンではどれほどの量を摂取すればDHA・EPAの酸化を防ぐことができるのか計算ができませんが、サプリメントの酸化防止にはビタミンE同様に効果的であるといえます。

このようにセサミンやアスタキサンチンも脂肪酸の酸化防止には効果的です。ただ、サプリメントに○○mg入っていれば安心という計算はできないため、食事からも野菜や果物をしっかり摂取することを心掛けましょう。

睡眠不足やストレスで酸化防止に必要なビタミンE量は増える

ここまで、魚やオメガ3脂肪酸サプリメントの酸化防止に必要なビタミンEについて確認してきました。生化学上、脂肪酸の酸化防止に必要なビタミンEの量は計算できます。しかし、人間の身体は計算上の理論が通用するほど単純ではありません。

活性酸素によって体内の脂肪酸は酸化されますが、活性酸素は睡眠不足やストレス、運動不足などで増加します。私は普段、管理栄養士としてさまざまな方に栄養指導をしていますが、風邪など体調不良のときは魚や油ものの摂取を控えるようお話しています。

それは、風邪など身体が炎症しているときや、睡眠不足などで体調不良のときに身体は活性酸素が増え、酸化ストレスを受けやすい状態となります。そのようなときは普段以上にビタミンが不足しがちになり、抗酸化ビタミンが必要となります。

風邪や体調不良のときは、オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸など体内で酸化しやすい油脂の摂取を控え、ビタミンを消費し過ぎないように心掛けましょう。

まとめ

ここでは、心身の健康には欠かせないDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)の酸化防止に対して、どれほどのビタミンEの含有が効果的であるかを確認してきました。

オメガ3脂肪酸の多くは細胞膜に取り込まれます。細胞膜は、私たちの身体を構成している最小単位の細胞一つ一つを守る膜です。その細胞膜に存在しているオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸が酸化してしまうと、細胞膜は機能低下し、細胞自体が働きにくくなります。

その結果、老化や体調不良、がんなどの病気を引き起こします。酸化されていないオメガ3脂肪酸は、情報伝達をスムーズにしたり、炎症を抑制したりと健康のためには欠かせません。ただ、その作用を発揮させるには、体内で酸化されやすいオメガ3脂肪酸を抗酸化物質によって守らなくてはいけません。

もともとDHA・EPAが豊富な魚にはビタミンE(抗酸化物質)が含まれています。しかし、実際に栄養価から計算してみると、魚だけを食べていても含まれている脂肪酸に対してのビタミンEは足りないことが分かりました。魚料理を食べるときは、野菜や果物も積極的に摂る必要があります。

また、各脂肪酸の抗酸化に対して必要なビタミンE量は計算できます。「(1.5×EPA量)+(1.8×DHA量)」を計算することによって、DHA・EPAサプリメントに必要なビタミンE量を算出できます。計算した数値に、さらに安全面を考慮してその量の2~3倍のビタミンEが含有されているサプリメントを選ぶと安心できます。

ただ、普段の生活に睡眠不足やストレスが多いことで、DHA・EPAを酸化させる活性酸素は増えてしまいます。普段の生活習慣を見直すと共に、サプリメントの抗酸化物質だけに頼らず、食事からも野菜や果物を積極的に摂取するようにしましょう。