DHA・EPA(魚油)が身体の健康のために有効であることは広く認知されています。また、魚を毎日食べることは難しいからと、DHA・EPAのサプリメントを摂取している人も多いです。

「DHA・EPAは脳の発達のためにも必要である」という情報も多く、親としては自分の子供に魚油を補わせたいと考えるでしょう。

ただ、魚を毎日子供に食べさせれば良いものの、「子供が魚嫌いで困っている」「もともと魚料理をあまりしない」などと悩んでいる親は多いです。

そこで、子供にDHA・EPAのサプリメントや栄養機能食品などを摂取させたいと考えているが、その安全性に疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。ここでは、子供へDHA・EPAがどれほど必要か、また子供に与えるサプリメントの安全性や効果について述べていきます。

DHA・EPAが子供の身体に与える作用

では、DHA・EPAが子供の身体に与える作用から確認していきます。ここでの「子供」とは、離乳完了した頃から学童期が終わる12歳頃までを指します。それ以降になると、消化機能や摂取必要量なども、大人と変わらなくなるからです。

DHA・EPAは血液をサラサラにして動脈硬化を予防したり、中性脂肪を下げたりすることで有名ですが、子供にとって動脈硬化などの予防は必要ありません。しかし、血液を流れやすい状態にすることは子供にとって重要です。

EPAは血液中の赤血球を柔軟にし、血管の中を流れやすい状態にします。また、血管のしなやかさを保ち、身体の隅々まで血液を行き渡らせるのを助けます。その結果、血液は全身を流れやすい状態となります。

血液の流れを良くすることは、大人にとっては動脈硬化予防となります。一方で子供にとっては、栄養と酸素の運搬に重要です。

食べたものの栄養は、小腸から吸収され血液に乗って全身の細胞に運ばれます。そのため、血液が流れにくい状態だと、栄養や酸素は全身に運ばれにくい状態となり、成長の妨げになります。

細胞に栄養が満たされていないと、疲れやすさ、集中力低下などの症状につながります。また、丈夫な筋肉や骨をつくるためにも、栄養と酸素がしっかり各組織に運ばれることは重要になります。

DHA・EPAを積極的に摂取し、子供の頃に身体の土台をしっかり整えましょう。

DHA・EPAが子供の脳や精神に与える作用

DHA・EPAは身体だけでなく、脳内にとっても重要です。DHA・EPAと脳については世界中でたくさんの研究結果が発表されています。その多くのものに、DHA・EPAは「①子供の攻撃性(キレやすさ)を抑える」「②精神疾患症状を抑える」「③リラックス効果がある」といった有効性が発表されています。

では、なぜ魚油(DHA・EPA)が、子供の精神面や脳機能まで向上させるのでしょうか。

まず、体内の血液から脳内に入れる栄養や物質は限られています。脳内への有害物質の侵入を防ぐためのフィルターがあるからです。そして、DHAは脳内に入ることができる限られた栄養素のうちの一つです。ちなみに、EPAは脳内に入ることができません。

脳は6割が油で構成されており、千数百億個ある脳の神経細胞の膜は油が主成分となります。DHAは脳内に入ると脳の神経細胞の膜を柔らかくする作用をします。

脳は神経細胞から神経細胞に情報を伝達させることにより、体を動かしたり感情を覚えたりするようになります。情報がスムーズに伝達されて受理されるには、神経細胞の膜が柔軟であることが重要です。膜が柔軟でないと、伝えられた情報を受け取ることができないのです。

DHA・EPAの効果にある「①キレやすさの抑制」「②精神疾患症状の緩和」「③リラックス」については、いずれも脳内の神経伝達物質がしっかり神経細胞に受理されるかどうかで変わってきます。神経伝達物質とは、神経細胞から神経細胞に情報を運んでいる船のようなもので、興奮系・リラックス系・調整系などといくつかの種類があります。

そのうちの興奮系が過剰になり過ぎたり、リラックス系が不足したりすると、「キレやすさ」につながります。各神経伝達物質を脳内で合成するには、他のたんぱく質やビタミンなどの栄養素も必須になりますが、「神経細胞の膜が柔軟な状態であること」は精神安定には欠かせません。

また、DHA・EPAは「記憶力がアップする」「頭が良くなる」などともいわれていますが、それらの科学的証明はされていません。確かにDHAは脳内の「海馬」という部分に多く含まれ、海馬は記憶力を支配している組織です。そのため、DHAは記憶力向上に効果があるのではないかとされているのです。

さらに「頭が良くなる」という表現は漠然としていますが、DHAにより神経細胞の膜が柔軟になることで、思考力が豊かになったり、集中力ややる気が持続したりします。そういったことにより、「頭が良くなる」と表現されているのでしょう。

DHAに比べてEPAは脳内で直接作用することはありませんが、DHAを脳内に運ぶためには血液が流れやすい状態であることが重要です。体内の血液を流れやすくする作用はEPAにあります。そのため、間接的ではありますが、EPAの摂取も脳や精神状態を良好に維持するために必要です。

子供に必要なDHA・EPAの摂取量

ここまで、子供の身体にも精神にも、DHA・EPAの摂取は欠かせないことを確認してきました。では、子供にはどれほどの量のDHA・EPAが必要なのでしょうか。

大人(18歳以上)ではDHA・EPA合わせて1日あたり1000mgの摂取が目安とされています(厚生労働省の発表より)。また、DHA・EPAはオメガ3脂肪酸という脂肪酸に分類されます。DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸の大人の1日あたり摂取目安量は2100mgです(30~49歳男性)。

子供ではDHA・EPAだけの摂取目安量は算出されていませんが、DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸の摂取目安量は年齢別に出されています。

3~5歳の男児でオメガ3脂肪酸の1日あたり摂取目安量は1300mg、6~7歳で1400mg、7~11歳で1700mg、12歳からは2100mgであり大人と同じ目安量になります。

オメガ3脂肪酸といえば、DHA・EPAの他にクルミやエゴマ油、亜麻仁油などが含まれます。エゴマ油などに含まれるオメガ3脂肪酸は体内でDHA・EPAに変換されますが、効果的に摂取できるのはやはりDHA・EPAを直接魚やサプリメントで摂ることです。

DHA・EPAの子供の摂取目安量は定められていませんが、オメガ3脂肪酸の目安量から考慮し、3歳以降は1日あたり大人と同じ1000mgを目安にすると良いとされています。

DHA・EPA1000mgを摂取するには、ブリやサバの小さめの切り身なら1枚・サンマなら半身・マイワシなら1尾・サケやアジなら100g食べれば補えます。

また、魚の缶詰もDHA・EPAの摂取に有効であり、サバやサンマの缶詰なら、1日50gほど食べれば1日の必要量が摂取できます。

このように、食事の全体量としては大人と差がある子供の食事ですが、DHA・EPAの目安量を摂取しようとすると、毎日大人と同じように魚を摂取する必要があるのです。それほど、子供にとってDHA・EPAは重要な栄養素であると理解できます。

DHA・EPAのサプリメントは子供にとって安全か

DHA・EPAの摂取のためには、子供にとってけっこうな量の魚を食べる必要があります。しかし、毎日それほどの魚を食べることは困難な場合もあります。

子供の好きな料理の代表にカレー・ラーメン・ハンバーグ・オムライス・唐揚げなどがあります。私は管理栄養士として指導している立場ですが、今まで「サバの塩焼き」が一番好きだと言う子供に出会ったことがありません。どちらかというと、魚料理は子供の苦手な料理に含まれることが多いです。

そういったことなどから、「子供にもDHA・EPAのサプリメントを飲ませたい」と考える親は多いと思います。しかし、小さい子供にサプリメントを摂取させるには「栄養素の過剰摂取にならないか」「サプリメントの添加物は大丈夫か」「子供の身体に負担はないか」など不安はつきものです。

基本的には子供がDHA・EPAのサプリメントを摂取しても問題ありません。しかし、いくつか注意したい点はあります。子供の胃腸など消化器官は大人に比べて未熟です。さらに、解毒作用のメカニズムも発達していません。

そのため、子供の身体のためには、サプリメント購入時に製造過程や原材料などの確認が必要になります。注意すべき点は以下の通りです。

①GMP認定がある商品であること

②不必要な添加物が入っていないこと

③低温で抽出され製造されたものであること

④抗酸化物質が入っていること

⑤原材料にアレルギーをもっていないこと

⑥魚に含まれている有害金属(水銀)に対して対応がされていること

まず、①のGMP認定とは、サプリメントが安心できる工場や製造過程で作られているという認定になります。子供のサプリメントだけでなく、大人が摂取するサプリメントでも、GMP認定は良質なサプリメントを見極める基準となります。

②の添加物の問題はやはり気になる親が多いかと思います。大人であれば肝臓の解毒作用がしっかり働くため、添加物を無毒化することが可能ですが、子供の解毒能力は未熟です。余分な添加物はできる限り摂取しない方が良いでしょう。

しかし実は、「この商品は無添加です」と謳っているサプリメントは信用できません。サプリメントを作る上でどうしても添加物は必要です。まず、カプセル自体が添加物に入りますし、「材料を均一に充填する」「機械を詰まらせない」「湿度による品質劣化を避ける」など形あるサプリメントを実現するには、避けられない添加物もあります。

サプリメントの原材料に記載されているゼラチン・グリセリン・セルロースなどはカプセルの素材となる添加物です。

こういったもの以外に含まれている、着色料・合成甘味料・保存料・増量剤・香料などは必要ない添加物です。これらは、子供が飲みやすいように色をつけたり、甘味をつけたりするために使用されていますが、身体にとっては避けたいものです。

③④の低温抽出や抗酸化物質については、DHA・EPAの酸化を防ぐためです。DHA・EPAは油の中でも特に酸化しやすい性質をもっています。DHA・EPAが酸化されると、細胞を傷つけたり、血管内に蓄積し血液を流れにくくしたりします。

DHA・EPAは熱により酸化が促進されるため、サプリメントが高温で製造された場合はその時点で酸化されてしまいます。

また、製造されてから摂取するまでにどうしても時間が経ってしまうため、サプリメント内にDHA・EPAと共に酸化を防ぐ抗酸化物質が配合されているものが良いでしょう。抗酸化物質としてはアスタキサンチンビタミンEが有名です。

⑤のアレルギーについては、特に子供には注意が必要です。DHA・EPAサプリメントの原材料は魚のものが多いので、「その原材料の魚が何であるのか」をしっかり確認しましょう。特に原材料がサバのもの、オキアミのものに対して、サバアレルギー、甲殻類アレルギーがある人は避けなくてはいけません。

また、カプセルに使用されるゼラチンについても、アレルギー反応を起こす子供がいます。そのような子供には、何由来のゼラチンであるかの確認は必要になります。

⑥の有害金属の除去では、原材料がマグロやカツオなどの大型魚の場合に注意が必要です。大型魚は水銀を含んでいる場合が多く、水銀は体内に蓄積されると排出されにくいです。サプリメント製造時に水銀除去してあるものを選ぶようにしましょう。

子供の身体では、消化器官や内臓器官がまだ成長過程です。DHA・EPAのサプリメントは有効ですが、基本は魚から摂取することを心掛けましょう。魚を食べ、「口→胃→十二指腸→小腸→全身」という具合に運ばれる過程が、本来の消化能力を高めます。栄養の吸収をサプリメントに任せていると、本来の消化能力が成長しません。

基本は魚を食べることからのDHA・EPA摂取を心掛け、魚が食べられないときの一つの手段としてサプリメント摂取を取り入れるようにするといいです。

例えば、自宅にサプリメントを用意しておき、魚料理ではなかった日などに摂取する方法もあります。しかし、DHA・EPAサプリメントの長期保管は避けたいです。DHA・EPAは酸化しやすいサプリメントなので、暗所に保管し、賞味期限は守りましょう。

DHA・EPA入りのグミ(お菓子)は有効か

また、DHA・EPA入りの食品はサプリメント以外に、グミなどお菓子に配合されているものもあります。サプリメントに抵抗があってもグミなら気軽に子供に与えられる人も多いかもしれません。

しかし、結論から述べますと、「DHA・EPA入りのグミなどは効果がない」といえます。実際、DHA入りのグミを製造している企業に製造過程を問い合わせてみたところ、DHAの抽出後に砂糖など他の材料を混ぜて加熱することが分かりました。その後冷却し、グミの形となるわけですが、「加熱」という工程に問題があります。

DHA・EPAは加熱されると酸化されてしまいます。DHA・EPAが酸化される条件は「酸素・熱・光」です。そのため、グミ製造過程で加熱されて実際に食べるまでに時間が経っていれば、中身は酸化されている状態です。

酸化されているDHA・EPAを砂糖といっしょに摂取していたら、身体の細胞が傷つくもとになります。そういったことから、「DHA・EPAの摂取はグミなどの食品より、魚やサプリメントの方が有効である」といえます。

DHA入りの粉ミルクは有効か

DHA入りのお菓子について述べましたが、赤ちゃんが飲む粉ミルクに対してもDHAが配合されているものがあります。なぜ粉ミルクにまでDHAが配合されているのかというと、母乳にはDHAが含まれるからです。

赤ちゃんに対し「母乳で育てた場合と、DHAを含まない粉ミルクで育てた場合では知能指数に大きく差が出る」という研究結果から、多くの粉ミルクにDHAは含まれるようになりました。

粉ミルクに含まれるDHAについては乾燥して製造される粉末油脂です。このとき、乾燥させる時点で「酸化しているのではないか」と疑問に思うかもしれません。しかし、DHAの粉末油脂に関しては酸化安定に対しての研究がされており、酸化しにくい加工となっているものが多いとされています。

赤ちゃんへしっかりDHAを与えるには、母親が魚やサプリメントからDHAを摂取し、母乳で育てるのが理想といえます。しかし、粉ミルクを使用する際でもDHA摂取が期待できるでしょう。各メーカーによって粉末油脂の製造方法は異なりますので、酸化が気になる場合は、粉ミルクメーカーに問い合わせてみると良いです。

子供が食べやすい魚料理

ここまで、子供に対してDHA・EPA摂取がいかに重要であるかを確認してきました。DHA・EPAの摂取方法の一つの手段として、子供にもサプリメントでの摂取は有効です。しかし基本は、胃腸の消化吸収機能をしっかり使用する「魚料理からの摂取」となります。

ただ、魚料理は苦手な子供が多いのは事実です。ここでは、そのような子供でも食べやすい魚料理法を以下に紹介します。

◎マグロの酢豚風:酢豚の豚肉の代わりにマグロを使用します。下処理としてマグロを一口大に切り、塩コショウをし、片栗粉をまぶします。あとは、酢豚を作る要領で豚肉の代わりにマグロを入れれば完成です。

◎ブリの照り焼き:照り焼きのたれ(醤油・みりん・砂糖)に漬け込んでから焼くと、ブリがパサパサしがちです。ブリに塩をふり、水気をとったら、小麦粉をまぶします。フライパンに油をしき、ブリを両面焼いてから、照り焼きのたれをからめると、パサパサしないブリの照り焼きとなります。

◎鰆の塩麹焼き:魚は料理する24時間前から塩麹などの発酵調味料に漬け込んでおくと、繊維が柔らかくなります。焼くときは焦げやすいため、クッキングシートなどの上で焼くと調理しやすいです。発酵調味料は他に、醤油麹、酒粕+味噌砂糖などがあります。子供も食べやすい柔らかな食感になります。

子供が魚料理を嫌う理由は「食感がパサパサする」「骨がある」「魚の匂いが強い」などです。そういった理由を解消した料理にすると、子供にとっても食べやすくなります。

まとめ

ここでは、DHA・EPAが子供の身体にとって重要であること、DHA・EPAのサプリメントやグミなどの有効性について確認してきました。

身体と脳の成長過程である子供には、DHA・EPAの摂取が欠かせません。成長のためには、血液によって全身にしっかり栄養と酸素を運ばなくてはいけません。そのためには、血液の流れを良くするDHA・EPAが必要です。

また、精神的な安定やスムーズな脳内情報伝達には、脳の神経細胞を構成するDHA・EPAが欠かせません。DHA・EPAの比重が低い神経細胞になると、キレやすく不安定な状態を引き起こします。

このように子供の脳や身体にはDHA・EPAが重要であっても、毎日魚料理を食べることが難しい場合は、DHA・EPAのサプリメントを用いることも有効です。サプリメントを選ぶ際には、「酸化」「品質」「アレルギー」「添加物や有害金属」に対して考慮されているものが良いです。

子供の時期は、全ての身体組織の成長期として重要です。「魚を食べて消化吸収する」という、本来備わっている消化能力を使用することを基本とし、それでも補え切れない場合はサプリメントによりDHA・EPAを摂取しましょう。