メタボという言葉は、太っている人の代名詞のように使われているほど広まっています。メタボとは、メタボリックシンドロームの略で、内臓脂肪症候群のことです。

皮下脂肪が多いというわけではなく、内臓脂肪の蓄積により糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こしている状態を指します。さらに、これらの生活習慣病は心筋梗塞や脳梗塞の原因になる動脈硬化を進行させます。

そういったことから、「まだ身体に何の症状も出ていないうちに、動脈硬化の原因となる生活習慣病を改善するべきである」と始まったのがメタボリックシンドローム対策の観点なのです。

 

生活習慣病と呼ばれる糖尿病も高血圧も脂質異常症も、「血管内の状態がどうであるか」が鍵を握っています。このとき血管内の状態を良くするためには、魚の油(DHA・EPA)が効果的であるといわれています。

では、実際に内臓脂肪の蓄積や生活習慣病がどのように動脈硬化を引き起こすのでしょうか。また、それらの症状にDHA・EPAはどうして有効であるのか確認していきます。

糖尿病・高血圧はどのような病気か

まず生活習慣病とされている3大疾患(糖尿病・高血圧・脂質異常症)について簡単に紹介します。

最初に糖尿病とは、血糖値の調節がしにくくなり、身体のエネルギーが上手に使われない状態のことをいいます。放置しておくと、身体にさまざまな合併症を引き起こします。

血糖値とは、血液中のブドウ糖の量を指します。糖質(ご飯粒・パン・麺・砂糖・果物など)を摂取すると血糖値が上がります。血糖値が高くなったところで、インスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌され、血糖値は低くなります。

通常、ブドウ糖(糖質が消化されてブドウ糖となる)は血液中から全身の細胞に取り込まれて、エネルギー源となります。しかし糖尿病になると、インスリン機能が十分に働かず、ブドウ糖がエネルギー源として使われないため、血糖値が高い状態が続きます。

疲れやすい体質になるのは、このようにブドウ糖がエネルギー源として使われにくくなるため、身体はエネルギー不足の状態となるからです。

血液中にブドウ糖が多い状態が続くことで、血管には負担がかかり傷つきやすくなります。血管が傷つくと血小板が塊を作り、血管の傷を塞ごうとします。この塊が血栓です。血栓が血管内にできると、さまざまな悪影響が起きます。

まず、毛細血管などの細い血管が影響を受け、血流が滞るため、網膜症、腎症、神経障害を起こします。次に動脈などの血管が影響を受け、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった血管疾患を起こします。

このように、糖尿病は血管の状態を悪化させ、重大な病気を引き起こすのです。

次に高血圧をみていきましょう。高血圧も糖尿病と同じように血管の状態を悪化させてしまうものです。

まず、食生活など生活習慣の乱れから、血液が流れる血管に老廃物や過剰な脂質がつき、血流が悪くなります。すると、心臓は圧力を高めて頑張って血液を流そうとします。その結果、血圧が高い状態となります。

血管に高い血圧がかかり続けると、血管に弾力がなくなり、動脈硬化の原因になるのです。血管が硬くなると、心臓に負担がかかります。さらに、身体中の隅々まで血液が行き渡りにくくなり、脳に栄養や酸素が届きにくい状態となります。

このように血圧の高さも、心臓や脳にとっては重大な影響を与えます。血管を柔らかくして血液が流れやすい状態を作ることが必要となります。

コレステロールのメカニズムからみる脂質異常症とは

では、生活習慣病とされる3大疾患の最後の1つ、脂質異常症はどうなのでしょうか。脂質異常症には、健康診断の血液検査でよくみるコレステロールや中性脂肪が関係しています。高脂血症とも呼ばれます。

実際のところ、「コレステロール値が高いです」といわれても自覚症状がないので認識しにくいかと思います。しかし、日本人の約206万人が脂質異常症であるという状況でもあります。(平成26年厚生労働省調査)

また、スーパーにいけば「コレステロール・中性脂肪を下げる」などと商品に記載されているものも多いため、何となく「コレステロールや中性脂肪は悪者である」とイメージしている人も多いでしょう。

コレステロールとは脂質の一種で、私たちが健康的な身体を保つためには欠かせないものです。細胞膜や消化液(胆汁)、ホルモンの材料となるため、コレステロール自体が不足するとさまざまな症状を引き起こします。

コレステロールは7~8割が体内で合成されます。一般的に悪玉コレステロールと呼ばれるものは、血液検査ではLDLコレステロールと記されています。善玉コレステロールはHDLコレステロールです。しかし、この呼び方は悪い働きをするから悪玉、良い働きをするから善玉という意味があるわけではありません。

LDLコレステロール(悪玉)は、肝臓で作られた後、血流により運ばれ全身の細胞で有効利用されます。余ったLDLコレステロールは血管内に留まりますが、HDLコレステロール(善玉)がそれを回収して肝臓に戻してくれる役割をします。

そのため、メタボリックシンドロームでは、LDLの過剰よりも、HDLの不足が問題とされています。

では、この2つのコレステロールがどうなったときに身体への不都合が現れるのでしょうか。それは、コレステロールの酸化がポイントとなります。

LDLコレステロールが過剰となり、HDLコレステロールが不足している状態のとき、余ったLDLコレステロールは動脈の壁の中に入り込みます。そこで、体内の酸化の影響を受けて、酸化LDLとなります。酸化LDLは「過酸化脂質」と呼ばれるものですが、どんどん血管の内膜に蓄積されていきます。

酸化LDLが蓄積されると、血管内はコブができた状態となり、血流が悪化し、全身に栄養や酸素が行き渡らなくなります。そのコブが破裂すると血栓ができ、血流が完全に途絶え、心筋梗塞や脳梗塞が起こるという仕組みになります。

また、HDLは蓄積されたLDLを血管内に取り戻す働きもします。そのため、コレステロールによる血管の損傷を防ぐには、LDLとHDLのバランス、そしてそれらを酸化させないことが重要になります。

脂質異常症は中性脂肪も影響します。中性脂肪はトリグリセリドとも呼ばれ、血液検査では「TG」と記載されます。

主に食べ物から摂取した脂肪は、小腸から吸収され血液によって全身に運ばれます。中性脂肪は脂肪の中でもエネルギー源として利用されたり、体温の低下を防いだりといった働きをします。エネルギーとして使いきれなかった分が中性脂肪として蓄えられます。

中性脂肪が増え過ぎたとき、直接血管に蓄積するわけではありません。中性脂肪が増えると、HDLコレステロールを減少させます。そのため、酸化LDLの蓄積を進行させることとなり、動脈硬化の原因になるのです。

このように、糖尿病(高血糖状態)・高血圧・脂質異常症(高脂血症)はそれぞれ血管に悪影響を及ぼし、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があります。そこで、「血管が硬くなり、病気になる前に血管内を整え、血流を良くしましょう」と生活習慣の改善を促すのがメタボ対策です。

メタボリックシンドロームになる食生活

では、血管にダメージを与え、さらに脳や心臓にも影響するメタボを引き起こす食生活をみていきましょう。生活習慣病では生活習慣のさまざまな原因が関係しています。ただ、糖尿病・高血圧・脂質異常症(高脂血症)の予防では避けるべき食生活が共通しています。

メタボリックシンドロームを引き起こす食生活の共通点は以下の点です。

①野菜の摂取量が少ない

②砂糖を使ったお菓子や飲料の摂取量が多い

③主食(ご飯粒・麺・パン)の量が多い

④魚を食べることが少ない

⑤外食・惣菜・コンビニ食が多い

このような食生活を続けていると血管内の状態は悪化していきます。

上述の通り、コレステロールは酸化されると血管内に蓄積します。コレステロールが酸化されるのは、「酸化した油を摂取したとき」と「酸化を防ぐ抗酸化物質の摂取が足りないとき」です。抗酸化物質には、野菜や果物があります。そのため、①の野菜の摂取量とメタボリックシンドロームは関係が成り立つのです。

また、②③の砂糖や主食に含まれる糖質の過剰摂取は、血糖値を上げることの他に、血管内に炎症を引き起こします。その炎症が続くことが動脈硬化の原因になります。

さらに、⑤の外食やコンビニ食には酸化した油や、炎症を引き起こす油(植物油脂・加工油脂)が多く含まれています。そういったことから、外食やコンビニ食を多く食べると酸化LDLの蓄積を促し、血管内の炎症を慢性化(長く続く)させる原因になるのです。

では、④の「魚の摂取とメタボリックシンドローム」はどう関係しているのでしょうか。

血管に作用するDHA・EPA

魚の油であるDHA・EPAの摂取には血液サラサラ効果があるとして、中性脂肪やLDLコレステロール値を下げるためにDHA・EPAが注目されています。

DHA・EPAはともにオメガ3脂肪酸と呼ばれる油の一種であり、ともに魚の油であるため、セットで認識されていることが多いです。しかし、DHAとEPAは身体に対しては異なる作用をします。

EPAは赤血球や血小板(血液の成分)の膜や、それらが流れる血管を柔軟にする効果があります。赤血球の膜が柔らかいことで、赤血球は血管の細さに合わせて柔軟に形を変えることができ、流れやすくなります。また、血管内の血栓形成を防ぎ、血管を詰まりにくくする効果もあります。

これがEPAに「血液サラサラ効果がある」といわれている理由です。血流を良くして動脈硬化を防ぐには、EPAは欠かすことができません。

また、「オメガ3脂肪酸はダイエット効果もある」といわれているように、脂肪燃焼にも効果的です。これは、DHA・EPAが脂肪を分解する酵素(リパーゼ)を活性化させる役割をもっているためです。

さらにDHA・EPAはともに、身体中の炎症が慢性化するのを抑制する作用があります。そのため、血管にできた炎症(傷)を修復し、動脈硬化の予防になります。

この2つの脂肪酸については世界中であらゆる研究がされており、身体に対する作用は数多く発表されています。

例えば、2016年カナダで発表された論文では、以下のようにDHAとEPAの違いが述べられています。

〇血糖値や中性脂肪値を低下させ、脂肪を燃焼させる効果:DHA>EPA

〇身体の炎症に対しての抑制効果:DHA≒EPA

〇中性脂肪減少効果:DHA>EPA

〇HDLコレステロール(コレステロール蓄積を防ぐ)増加効果:DHA>EPA

こう見ると、血液検査の結果に効果的なのはDHAのように見えます。しかし、この結果はEPAの赤血球を柔軟にする作用や、血栓を防ぐ作用があった上で成り立っています。そのため、DHAとEPAは体内で異なる作用をしますが、それぞれの働きがあることで相乗効果となり、動脈硬化予防が期待できるのです。

魚からの摂取であれば、DHA・EPAともに摂取することができます。しかし、サプリメント等からこれらを摂取しようとした場合は単独で入っている場合もあります。身体への効果を考えるのであればDHAとEPAはセットで摂ることをお勧めします。

脳内に入れるDHAと入れないEPA

体内でのDHA・EPAの働きを確認してきました。メタボリックシンドロームといえば、脳梗塞の予防も重要なポイントになります。では、DHA・EPAは脳梗塞の予防にも有効なのでしょうか。

脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり詰まったりすることで、脳内に血液が行き渡らず、栄養や酸素が運ばれない状態となります。その結果、脳の細胞が死んでいき、後遺症としてさまざまな神経障害が生じる病気です。日本の3大死因の1つでもあります。

脳梗塞をすでに起こしていても症状が出ない場合が多いです。脳ドッグを受けた日本人(933例・平均年齢57歳)の研究で、無症状性脳梗塞だった人が10.6%認められています。症状が出てしまってからでは危険が大きい脳梗塞ですので、いかに無症状のうちに改善予防するかが重要となります。

通常、食べた物は胃腸で消化吸収され、血液に乗って全身に運ばれます。しかし、血液にのって脳の中まで入れるものと、脳への侵入が阻止されてしまうものに分けられるのです。

その侵入と阻止を決める役目を果たすのが、血液脳関門と呼ばれる脳毛細血管の内皮細胞です。脳の細胞内に必要な栄養素と酸素だけ送り込み、薬剤やウイルスなどの不要物の侵入を制御しています。

オメガ3脂肪酸については、EPAは血液脳関門によって制御されてしまいますが、DHAは脳内に入ることができます。EPAは多少入ることができても、入った途端すぐに酸化してしまうという事実があります。そのため、脳内で作用できるのはDHAのみということになります。

DHAは脳内血管の炎症を抑制し、血流を良くすることで、脳細胞を守る働きをするとされています。また、脳内の神経細胞の膜も形成することから、脳内で栄養や酸素を受け取りやすい状態を作る作用もあります。

脳内に入れるのはDHAだけですが、EPAも脳梗塞の予防には有効です。腸で吸収された栄養を脳まで届けるには、血液がサラサラでないと運ばれにくくなってしまいます。上述の通り、EPAは体内で血液をサラサラにします。

そのため、脳へしっかりと栄養と酸素を運び、脳内の血管と細胞膜をしなやかに保つためには、DHAとEPAの両方が必要であるといえます。

メタボリックシンドロームに有効なDHA・EPA

ここまで、DHAとEPAがメタボリックシンドローム予防にどう関与しているのか、作用機序とともにみてきました。

では、どのようなDHA・EPAが効果を得られやすいのでしょうか。DHA・EPAは共に魚から摂取できます。しかし、いくらDHA・EPAがメタボに効果的だからといって、スーパーで買った惣菜の魚のフライばかり食べていても、体重が減ったり血液の質が良くなったりすることはありません。

DHA・EPAはとても酸化しやすい油です。上述の通り、酸化した油を摂ると、過酸化脂質を血管内に蓄積させてしまいます。その結果、余計に血管を傷つけてしまうことになるのです。また、フライをするときに使用するサラダ油は、メタボの症状を促進させるものです。

コレステロールは体内で酸化されることで、蓄積され血管に傷をつけます。その酸化を防ぐ抗酸化物質(野菜や果物)もDHA・EPAと共に摂取することが必要です。

さらにフライになっているものは、調理段階で小麦粉やパン粉を使用するため、糖質もたくさん摂取することになります。メタボを予防改善させるには糖質を控えることもポイントになります。

身体に有効なDHA・EPAの摂り方(調理の仕方)は存在します。料理済みで、時間経過している魚の油ではなく、新鮮な魚を調理してDHA・EPAを摂取することが重要になります。

また、サプリメントでDHA・EPAを摂取してメタボリックシンドロームを予防する場合であっても、酸化への工夫がされているサプリメントを摂取する必要があります。

まとめ

命に関わる危険な状態を引き起こすメタボリックシンドロームについて述べてきました。特定健康診査受診者のうち、メタボリックシンドローム該当者及び予備軍の割合は26.2%です(平成26年・厚生労働省調べ)。これは、4人に1人の割合です。

平成20年からメタボ診断による特定保健指導が始まっているにも関わらず、該当者の人数は減少していません。

身体の健康のためには「甘いものを控えるべきである」「アルコールの過剰摂取は避けなければならない」「食べ過ぎは良くない」「野菜を食べなくてはならない」という認識を持っている人は多いです。

ただ、実際は「魚を食べる量が少ない」ことがメタボの原因になっていると知らない人はたくさんいます。

現状のようにメタボリックシンドローム該当者の割合が変わらないということは、「魚の摂取不足」が大きな要因の一つになっています。

魚に含まれるDHA・EPAは体内の血管内をしなやかに保ち、血液を流れやすい状態にします。LDLコレステロール、中性脂肪、血糖の数値を下げ、HDLコレステロールの数値を上げることも研究結果として証明されています。

さらに脳内の血管の状態も良好にすることで、脳梗塞の発症も防ぎます。

酸化や調理法に注意しながら、魚やサプリメントからDHA・EPAを摂取しましょう。適切にDHA・EPAを摂取すれば、動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞・脳梗塞になるリスクを下げることができます。