「魚に含まれているDHAとEPAは身体や脳に良い」と注目度が高くなっているため、魚を食べようと意識している人は多いかと思います。

ただ、食の欧米化が進み、「肉料理は好んで食べるけど魚料理はめったに食べない」「魚料理はコストがかかる」「魚をさばいたり、調理したりするのが大変そう」「魚臭いのが苦手」「子供が魚料理だと喜ばない」などと魚を食べる頻度が減っているのが現状です。

魚を食べる頻度を聞いたアンケート(389人回答)でも、およそ半数が「週に2~3回」と回答しています。また、「週に1回またはそれ以下」の回答と合わせると、約8割が「週に3回以下」という結果が出ています。(2017年3月 ニッスイ調べより)

若者だけでなく、高齢者も魚より肉を食べたいと考え、日本人の魚離れは増える一方です。ただ、あらゆる情報を手に入れられるということで、多くの世代で健康志向が強まっているという事実もあります。

では、魚料理は苦手だが、「健康のために魚を食べる習慣をつけたい」「無駄なくDHA・EPAを摂取したい」「手軽に魚料理の頻度を上げたい」という目標を達成するためには、どんな魚をどう食べたら良いのでしょうか。

ここでは、「魚の種類や部位によって、DHAやEPAがたくさん含まれているかが変わってくるのか」「魚肉ソーセージやかまぼこなど加工品、冷凍魚での含有量はどうなのか」「調理法で摂取量が変わるにか」について確認していきましょう。最後には効率よくDHA・EPAが摂れる簡単レシピも紹介します。

DHA・EPAが多く含まれている魚ランキング

まず、どの魚がたくさんDHA・EPAを含んでいるのか見ていきます。

魚の種類が違えば、含むDHA・EPAの量も異なります。そこでDHAの含有量が多い順に上からランキングで並べています。

魚類のDHA・EPA含有量表(可食部100gあたり)

食材 DHA(mg) EPA(mg) 合計量(mg)
まぐろ(脂身) 2877 1288 4165
ブリ 1785 898 2683
 サバ 1781  1214  2995
 サンマ  1398  844  2242
 うなぎ  1332  742  2074
 まいわし  1136  1381  2517
 サケ  820  492  1312
 まぐろ(天然赤身)  115  27  142
 タラ  72  37  109

いかがでしょうか。この含有量はあくまでも可食部100gあたりの量です。そのため、普段の摂取量に調整しての確認が必要です。

おおよその重さになりますが、例えばサンマ1尾105g、刺身1切れ20g、ブリ切り身1枚120g、サバ切り身1枚80g、まいわし1尾55gほどです。これをイメージして、実際の摂取量を計算すると分かりやすいです。

DHAの含有量だけでのランキングになりますが、1位はまぐろの脂身(トロの部分)です。2位ブリ、3位サバ、4位サンマ、5位うなぎという順になりました。同じまぐろでも、脂身と赤身では大きく含有量が違うことが分かります。赤身の魚に比べ、白身魚のDHAとEPAの含有量は少なくなります。

厚生労働省から推奨されている1日あたりの摂取量はDHAとEPA合わせて1000mgです。数字だけで比較すると、「簡単に1000mgを摂取できるか」に見て取れますが、実際は焼いたり煮たりなどと調理すると、DHA・EPAの量は減少します。「どれだけの量が調理によって減少するのか」ということについては、後に紹介します。

上の表の通り、DHAの含有量が多い魚、EPAの含有量が多い魚はそれぞれ異なります。例えば、サンマはDHAが多いことに比べ、まいわしはEPAが多いです。

厚生労働省からの推奨量はDHAとEPAの合計量となっていますが、DHAとEPAはそれぞれ身体に対する効能が違います。魚の種類は300種類以上ありますので、まんべんなくさまざまな魚を食べたいものです。

魚の部位によってDHAの含有量は変わるのか

魚の種類によってDHAとEPAの含有量の違いを確認してきました。では、一匹の魚でも、部位によってそれらの含有量は違うのでしょうか。

今回はまぐろを例にして紹介していきます。DHAは魚の脂(魚油)なので、DHAの含有量が多いところは脂身が多いところということになります。まぐろの中で最もDHAの量が豊富なのは、「眼の後ろの眼窩脂肪(がんかしぼう)」です。次いで、中トロ、大トロ、最後に赤身となります。

一般的に魚の背側よりも、腹側の方が「脂身が多い」とされています。スーパーへ行くと、魚コーナーの一部に、ブリやサケなどのアラ、カマ、頭の部分が低価格で売られています。ブリなどはトロッとした眼窩脂肪(魚の目の脂肪)が味わえますし、身もしっかりついています。見かけたら、ぜひ手にとってみてください。

また、まぐろやカツオなどの大型の魚は一部分を食べることになりますが、いわしやサンマ、アジなどの小型の魚はまるまる1尾食べることが多いです。

魚による健康への有効成分はDHAとEPAだけではありません。血合いの部分には鉄分が豊富に含まれていますし、皮には抗酸化物質のビタミンEが豊富です。他にもアミノ酸から成るたんぱく質、さらにはあらゆるビタミン・ミネラルがたくさん含まれています。

そういったことから、小型魚はさまざまな種類を食し、また、大型魚もさまざまな部位を摂り入れることが、身体にとって有効な摂取法だといえます。

また、旬の魚であるかどうかでもDHA・EPAの含有量は変わってきます。「旬の魚は脂がのって美味しい」と認識されているように、旬の魚はそうでないものに対してDHA・EPA量が豊富です。

ブリを例にしてみると、「寒ブリ」と呼ばれる11~2月頃のブリはDHA・EPAをより多く含みます。

なお、「養殖の魚は天然の魚に比べ、栄養成分が劣っている」と認識されがちです。ただ、餌や育ち方により違いはあるものの、一概にどちらの方が「DHA・EPAが豊富である」とは言い切れません。

例えば、ブリの稚魚を短期育成した魚を「ハマチ」と呼んでいます。これは養殖の魚です。養殖のハマチはいわしと魚粉を混ぜたものを餌にしているものが多いので、天然のものに劣らずDHA・EPAは豊富です。一般に、真鯛やまぐろの赤身も天然物より養殖物の方が「DHA・EPAの含有量が多い」とされています。

魚の缶詰のDHA・EPA含有量

このように魚の種類や部位によって、DHA・EPAの含有量が変わることが分かりました。では、スーパーなどに多くみられる魚の缶詰は、DHA・EPAの摂取源としてどうなのでしょうか。

メタボリックシンドロームを対象とする特定保健指導の導入(平成20年から)や、テレビや雑誌などの健康に対する特集が増え、私たちは栄養指導を受ける機会、栄養の情報を目にする機会が増えています。

その中でも、「魚の缶詰は、効率的に魚の栄養成分を摂れる」と聞いたことがある人は多いかと思います。また、日本は震災国なので、日持ちがし、調理しなくても食べられる缶詰の需要が高いという背景もあります。

では、魚の缶詰に含まれているDHA・EPA量をみていきます。

魚缶詰のDHA・EPA含有量(可食部100gあたり)

食材 DHA(mg) EPA(mg) 合計(mg)
まいわし水煮 1400 1100 2500
さば味付け 1300 1100 2400
しろさけ水煮 400 240 640
さんま味付け 1700 1000 2700
まぐろ油漬フレーク 150 77 227

この表の含有量を見て、驚かれる人も多いかと思います。まいわしやさば、さんまの缶詰を50g食べれば、1日に摂取すべきDHA・EPA量が摂れてしまうのです。

一般的に売られているさば缶ですと、中の汁を抜いた状態で140gほどですので、半分食べれば1日の摂取量を補えるということになります。

缶詰の魚の栄養成分、重さは各メーカーにより違いますので、購入の際には缶に記載されているDHA・EPA量を確認することをお勧めします。

魚の缶詰は「DHA・EPAの含有量が豊富であること」で注目を浴びている以外に、「DHA・EPAが酸化しにくい」という利点も健康の面で注目されています。

DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸はとても酸化しやすく、調理の際には酸化に対しての考慮が必要とされています。

酸化が促進されるのは「熱、空気、光」です。それらの酸化要因を遮断して作られ、販売されているのが魚の缶詰です。

ただ、味噌などの味付け缶には、原材料として砂糖が多量に入っているものが多いのです。これでは、「健康のために魚の缶詰を食べているつもりにも関わらず、糖質を摂り過ぎていた」ということになりかねません。したがって、味付け缶ばかり使用せず、水煮缶も選ぶようにすると良いです。

水煮缶とは、魚をシンプルに塩だけで味付けしてあるものなので、糖質の摂り過ぎを心配することなく食べられます。

なお、まぐろ油漬けフレークは「ツナ」として家庭で取り入れやすいかもしれませんが、油漬けの油は「植物油脂」のことを指します。植物油脂はオメガ3脂肪酸(DHAやEPAなど)ではありませんので、注意が必要です。

少量でしっかりDHA・EPAを補え、缶詰では調理の手間も必要ありません。また、さまざまな魚のバリエーションを楽しめるため、ぜひ缶詰を食卓に取り入れてみましょう。

魚肉ソーセージなどの加工品に含まれるDHA・EPAはどうなのか

このように、缶詰はDHA・EPAの摂取に対して非常に効果的ですが、その他の加工品はどうなのでしょうか。

例えば子供のおやつやお酒のおつまみに、魚肉ソーセージやかまぼこを冷蔵庫にストックしている家庭は多いのではないでしょうか。また、パッケージに「DHA入り」と記載され、特定保健用食品として売られている商品もあります。

そういった魚肉ソーセージやかまぼこなどの魚肉加工品には、身体に有効なDHA・EPAが含まれているのでしょうか。

魚肉ソーセージのパッケージを見ると、1本食べれば1日に必要なDHA・EPAが補える商品も多いです。ただ、その記載されているDHA・EPAが体内で有効成分となっているかどうかの鍵を握るのが、「DHA・EPAの酸化」です。

上述の通り、DHA・EPAは加熱・空気・光により酸化が促進されます。魚肉ソーセージなどの加工品をつくるとき、加熱は避けられない行程です。その後「いかに空気と光が遮断されているか」がポイントになります。

ほとんどの魚肉ソーセージは1本ずつ真空にされています。また、透明でない袋に入れられて商品とされているものが多いです。

そういったことから、「魚肉ソーセージのDHA・EPAは酸化からある程度守られている状態のものが多い」といえます。

また、原材料の欄を見ると、「魚肉」と書いてあるものと「タラ・サケ・オキアミ・ホッケ」など魚の種類が書いてあるものがあります。中には、「この魚はここの海から調達しています」と魚ごとに調達方法を記載してあるものもあります。

どちらがDHA・EPAとしての摂取が期待できるかというと、それは細かく魚の種類が書かれている方です。上の表で確認した通り、魚によってDHAとEPAの含有量がさまざまです。しっかり魚の種類が記載されているものを見れば、DHA・EPAが豊富な魚から作られているかそうでないかが分かります。

ただ、魚肉ソーセージには食感を良くするために「植物油脂」が加えられているものが多いです。植物油脂はオメガ6脂肪酸と呼ばれ、身体にとってDHA・EPAのオメガ3脂肪酸と逆の働きをします。

そのため、植物油脂をできるだけ避けなければいけません。DHA・EPAの摂取を目標にするなら、魚肉ソーセージばかりに頼ることなく、魚料理や缶詰からの摂取も心掛けましょう。

冷凍魚・干物は健康に対し有効か

調理の手軽さを考えたとき、冷凍魚を浮かべる人は多いかと思います。購入してから日持ちしない鮮魚に比べ、冷凍魚は買い置きしておくことができて便利です。また、内臓や頭など家庭での処理が難しい部分が取り除かれて冷凍されていることも、使いやすさにつながります。

魚がマイナス20度以下で冷凍されていれば、酸化がストップされ、品質を保つことができます。

ただ、温度が高かったり、冷凍のスピードが遅かったりなど、冷凍の仕方に問題があるときは解凍したときに「ドリップ」という水がたくさん出ます。ドリップがたくさん出ていると、魚の栄養成分も共に流れ出ており、味も品質も悪くなります。

解凍の刺身用まぐろや、解凍した切り身を購入する際に、発泡スチロールの容器にドリップが流れ出ているものは避けることをお勧めします。

また、家庭の冷凍庫は開けたり閉めたりを繰り返すため、温度が安定しません。これも品質の劣化に影響するので、冷凍魚を購入して家庭の冷凍庫で保管する場合、できるだけ早く食べる必要があります。

このような点を注意すれば、冷凍魚を使うことで魚料理の頻度を上げることができます。

なお、それでは魚の干物はどうなのでしょうか。魚の干物は天日干しにして加工されているため、「干物自体が酸化されている可能性がある」とイメージされるかもしれません。

天日干し加工でつくられる魚の干物は、その通りDHA・EPAが既に酸化されている可能性は高いです。

ただ、酸化を防ぐために、「乾燥機を用いて干物をつくる方法」や「火山灰にさらして吸湿・乾燥させ、セロハンで魚を包んで干物をつくる方法(灰干し)」など、酸化の心配をしないで食べられる干物もあります。

効率よくDHA・EPAを摂取できる調理法

ここまで、健康に良いとされるDHA・EPAは、「魚の種類や加工方法によってどう含有量が変わるのか」ということを確認してきました。

では、魚の調理方法によってDHA・EPAはどう減少するでしょうか。

魚油は熱に弱い性質があり、加熱するとDHA・EPAはすぐに魚から溶け出してしまいます。効率よくDHA・EPAを摂取するには、調理法の工夫が必要になります。

一般的に魚の調理というと、刺身、焼き魚、煮魚、揚げ魚などが考えられます。これらの調理法の中で、一番効率よくDHA・EPAを摂取できるのが、刺身です。上述の通り、熱を加えると魚の脂は溶けだしてしまうので、熱を加えない調理法である刺身だと、DHA・EPAを逃がすことなく摂取できます。

一般的に、焼いたり煮たりすると、生の状態に比べて約20%のDHA・EPAが減ります。また、フライなどの揚げ魚では、約50%にまでDHA・EPAが少なくなります。

そういった場合、例えば、焼くときには小麦粉などをまぶしムニエルにすることで、魚の脂(魚油)が溶け出しにくくなります。また、魚焼きグリルで焼くと受け皿に脂が落ちてしまうので、フライパンで焼き、溶け出した脂はソースとして使うなど工夫すると効率よく摂取できます。

さらに、煮魚ではDHA・EPAが溶け出した煮汁も飲むことができるように、少ない調味料で煮たり、片栗粉で煮汁にとろみをつけて「あんかけ」にしたりすると良いでしょう。

酸化の心配なくDHA・EPAを摂取するには

DHA・EPAの摂取を目的として魚を食べる際、一番気になるのが「酸化」です。ここまで述べた通り、オメガ3脂肪酸であるDHA・EPAは非常に酸化しやすい脂肪酸です。

酸化した状態のものを摂取すると、体内で過酸化脂質(質の悪い油)となり、細胞の老化、血栓、炎症の原因となります。健康のためにと摂取していたものが、逆効果になってしまうのです。

家庭での魚の摂取をDHA・EPAの酸化から守るためには以下のことに注意しましょう。

①調理したてのものを食べる

DHA・EPAは加熱により酸化が加速して進んでいくので、できるだけ調理したてのものを食べるようにします。

②干物や魚加工品は、作られ方を確認する

酸化していない干物や魚加工品を選ぶには、パッケージの裏などの加工工程をしっかり確認することで、酸化を促進してしまう「熱・空気・光」を避けることができます。

③解凍された魚はドリップを確認する

冷凍魚が解凍されるとき、適切な方法で冷凍されていなかった魚からは、ドリップがたくさん流れ出ます。ドリップの中には魚の栄養成分が溶け出しているので、解凍された魚を選ぶときは、ドリップが出ているかどうか注意が必要です。

④抗酸化物質の食品と共に食べる

酸化を抑制する抗酸化物質を魚料理に入れることで、体内での過酸化脂質の蓄積を防ぐことにつながります。例えばビタミンEは抗酸化物質の一つですが、アーモンドやゴマ、カボチャに多く含まれています。他にも、ビタミンAやCが豊富な野菜や果物を魚と共に食べましょう。

これらを意識し、脳と身体に有効なDHA・EPAの摂取を心掛けるといいです。

DHA・EPAを摂取しやすいレシピ

では最後に、ここまで述べた内容をもとに、効率よくDHA・EPAが摂取できるレシピを2つ紹介します。

①さばの水煮缶入りミネステローネ

トマト、セロリ、ニンニク、玉ねぎ、キャベツ、ニンジン、きのこなどでミネステローネを作り(調味料:洋風だし、トマトジュース、オイスターソース、塩コショウ)、最後にさばの水煮缶を適量入れます。オリーブオイルを少量回し入れると、完成です。

意外な組み合わせですが、さばがスープにコクを出してくれます。スープに入れることで、DHA・EPAも逃すことなく摂取できます。

②ブリのあんかけ

ブリの切り身に塩をかけ、片栗粉をまぶし、オリーブオイルをひいたフライパンで両面焼きます。その後、鍋に水とニンジン、玉ねぎ、しいたけ、ネギなどを入れ、あんをつくる(調味料:和風だし、しょうゆ、みりん、酒、砂糖、生姜すりおろし)。片栗粉であんにとろみをつけるようにします。

ブリにあんをかければ完成です。

魚の脂を逃がさないように調理し、抗酸化物質となる野菜と共に食べることで、効率よくDHA・EPAが摂取できます。子供にも食べやすい味ですし、魚の下処理も必要ありません。ぜひ一度試してみてください。

まとめ

ここまで、「魚の種類から加工品、魚の調理法それぞれに対して、DHA・EPAの含有量、また有効性はどう異なるのか」について確認してきました。

身体と脳の健康にとって、ますます注目度が高くなっているDHA・EPAです。効率よく摂取するには、「DHA・EPAが体内で有効に機能するような商品選びや調理法」を理解することが重要です。

また、「魚の調理や下処理が面倒」「コストがかかる」といった面については、調理しやすい冷凍魚や切り身、缶詰を使うことで食卓に魚料理を出す頻度を高められます。

その際、注意したい「DHA・EPAの酸化」のポイントを把握していれば、健康のために有効な魚商品を選択できます。酸化促進の要因である加熱・空気・光を避けた商品を選びましょう。

今ではインターネットなどで商品の製造過程や細かな原材料が確認できます。あらかじめ調べておくと、安心です。

簡単で安心できるものを上手に取り入れ、美味しい魚料理を食べ、身体と脳の健康維持を目指しましょう。