眼精疲労といえば目の疲れや目の重圧感などをイメージされるかと思います。しかし、眼精疲労は肩こりや頭痛、吐き気、だるさなど身体全体の症状として表れます。

パソコンやスマートフォンが仕事や日常生活に欠かせなくなっている現代では、眼精疲労を起こしやすくなっています。

眼精疲労を「ただの目の疲れ」だと放置しておくと、全身に疲れが蓄積したり、頭痛がひどくなったりして、症状は慢性化してしまいます。

ここでは眼精疲労を引き起こす原因やメカニズムを確認して、DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)が眼精疲労に効果的なのかを確認していきます。

眼精疲労を引き起こす原因

眼精疲労を引き起こす主な原因は目の酷使です。長時間パソコン作業をしていたり、本を読んだりしていると、目のピントを調節する毛様体筋が緊張し続けます。目の周りの筋肉が緊張していると、周囲の血管を流れている血液は流れにくくなります。

その結果血液によって運ばれる酸素や栄養素が目の細胞まで届かなくなり、さまざまな症状につながります。

また、毛様体筋が緊張する原因は目の酷使だけでなく、ドライアイや近視、遠視なども影響します。

ドライアイは涙の量が不足し、目の表面の細胞機能が低下することで起きます。コンタクトレンズの装着、エアコン使用などで乾燥した環境、目の酷使などによって起こりやすいドライアイは、多くの現代人が無意識のうちに陥っている病気です。

さらに毛様体筋の緊張は目から引き起る原因だけでなく、肩こりや自律神経失調症、風邪、冷えなどからも起こります。

原因はさまざまありますが、毛様体筋の緊張による血流の悪化を予防・改善することが眼精疲労を引き起こさないポイントとなります。

では、毛様体筋の緊張と血流の悪化を引き起こす原因をそれぞれ1~5で確認していきます。

1.同じ姿勢で一カ所を長時間見る

同じ姿勢でパソコン作業など長時間目を使っていると、筋肉は凝り固まってきます。毛様体筋は目のレンズを厚くしたり薄くしたりすることでピントを調節しています。

基本的に遠くを見る時は毛様体筋が緩んでレンズは薄くなり、近くを見る時は毛様体筋が収縮してレンズを厚くします。

「パソコン作業を長時間行うと目を酷使している」ということで、毛様体筋をフルに使っているイメージがあります。しかし、パソコンやスマホを長時間使うことでは毛様体筋をフルに使うことなく、逆に筋肉の一部しか使用しないことで凝り固まってしまうのです。

炎天下でスポーツや買い物をしていると、まぶしいときは目を細め、近くと遠くを交互に見ることで毛様体筋は全体をくまなく使うことになります。そういった状況の方が、近く(一カ所)だけを見ている場合に比べ毛様体筋はフルに使用されるので、緊張が続いて凝り固まることはないのです。

そのため、長時間のパソコン作業や読書、運転中には、毛様体筋の緊張を防ぐために定期的に目を休めてあらゆる箇所を見ることが必要です。例えば30分パソコン作業をしたら5分は遠くを見るなどして、毛様体筋の緊張をほぐしましょう。

また、目の休憩の際には身体全体の筋肉をほぐすことも重要です。特に同じ姿勢を続けることで、肩周辺や背中の筋肉が凝り固まると、血流は悪くなります。同じ姿勢で一カ所を長時間みていることは、毛様体筋も全身の筋肉も緊張させてしまうため、ストレッチなどをしながら筋肉をほぐしていくことが重要です。

2.自律神経の乱れ

「長時間近くを見続けていること」と同じように自律神経の乱れも毛様体筋を緊張させます。自律神経は自分の意思でコントロールできない神経であり、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経に支配されています。

交感神経が優位になると、心拍数は増加し、血圧や血糖値は上昇、体温も上がり、筋肉は緊張します。一方、副交感神経が優位になると、心拍数は低下し、血圧降下、胃腸機能は向上し、筋肉はリラックスします。

交感神経は活動時だけでなく、ストレスを感じている時、不安緊張が強い時も優位になります。そのため、常にストレスを感じていたり、緊張する場面が多かったりすると、交感神経が優位になっている時間が長くなります。その結果、全身の筋肉は緊張してしまい、血流は悪くなります。

3.血液の量と質

血液の量が少なかったり成分が悪かったりすると血流は悪くなります。血液は水とたんぱく質、ビタミン、ミネラルが主な成分です。それらの成分が不足していると血液量は少なくなり、血液としての機能も低下します。

特に、血液中の鉄はヘモグロビンとして下のイラストのように酸素を運搬しています。鉄が不足していると、血液としての「酸素を運ぶ」という大事な機能が低下し、全身の細胞は酸素不足になってしまいます。

また、血液中には糖や脂質も流れています。糖や脂質は血液中に多過ぎると血液としては流れにくくなります。麺類など主食や、砂糖が含まれているお菓子を頻繁に食べることで糖は過剰になります。

また、脂質では加工食品やコンビニ食品、お菓子、外食に含まれているオメガ6脂肪酸(植物油脂)が血液中に多くあると、血流の悪化に影響します。菓子パンやコンビニ食品、惣菜、インスタント食品を多く食べることで、糖・脂質ともに過剰摂取となり、血液は流れにくくなります。

質が良好な血液をたっぷり作るには、肉や魚、野菜などまんべんなく食品を摂取して、たんぱく質、ビタミンミネラル、そして水分を補いましょう。そうすることで、目の周辺の毛細血管まで運ばれやすい血液になり、眼精疲労の予防になります。

4.炎症

血管に炎症があると血液は流れにくくなります。炎症は体内にウイルスや細菌など有害物質が侵入してきたときに、免疫細胞がその有害物質を排出しようとする反応です。炎症反応が起こるとき、発熱や腫れ、赤みを伴います。例えば風邪をひいたときは発熱を伴い、蚊にさされたときは腫れを伴います。

しかし、身体に侵入した有害物質だけでなく、機能低下した細胞に対しても免疫細胞は体外へ排出させようとします。その際、機能低下した細胞が体内に多い場合、免疫細胞は健康な細胞も排出しようとし、炎症反応は体内に広がります。

炎症反応が血管中に多くできていると、血液は流れにくくなります。その結果、目の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、眼精疲労として表れます。

細胞機能の低下による炎症反応はストレス過多や睡眠不足などがあるときに起こりやすいです。また、オメガ6脂肪酸(サラダ油など)を摂取すると、体内で炎症を促す物質に変わります。

そのため、普段からオメガ6脂肪酸を多く含む食品(惣菜や加工食品、コンビニ食品、お菓子、外食など)をよく食べる場合は、「身体は炎症反応を起こしやすい状態になっている」と考えられます。

一方、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は炎症を抑制・収束する作用のある物質に変換されます。炎症が少ない血管にし、血流を良くするには、DHA・EPAを魚料理などから積極的に摂取することが重要になります。

しかし、いくら炎症を抑制するからといって酸化されたDHA・EPAを摂取していては逆に炎症を促すことになります。魚に含まれているDHA・EPAは、酸素・熱・光に当てられると酸化し、過酸化脂質となってしまうのです。

炎症抑制の作用を有効にするには、料理したての魚料理や、抗酸化物質(ビタミンEなど)が含まれているDHA・EPAサプリメントを摂取するようにしましょう。

5.ストレスや睡眠不足

ストレスや睡眠不足があると、活性酸素が体内で増えます。呼吸で取り入れた酸素のうち、数パーセントは変化し、体内に侵入した病原体と戦う物質になります。その物質のことを活性酸素といいます。

活性酸素は加齢、ストレス、睡眠不足、運動不足、不摂生などで増加します。増加し過ぎた活性酸素は、体内に存在する脂質を酸化させてしまうため、「健康のためには活性酸素を減らすことが必要」とされています。

脂質の酸化による血流の悪化を防ぐためには、ストレスや睡眠不足を解消して活性酸素を増やさないようにすることが重要です。

さらに、機能低下や疲労した目の細胞を再生・修復するためのホルモンが分泌されるのは、睡眠中です。そのため、睡眠不足の状態があると、機能低下した細胞はなかなか修復されずに、眼精疲労が続いてしまいます。

このようにあらゆる原因でストレス過多や睡眠不足は眼精疲労を引き起こします。

「ストレスを減らす」ことは、環境が変わらない限り難しいかもしれませんが、「自分はストレスを感じやすく交感神経が優位になりやすい体質だ」と自覚するだけでも、リラックスすることを心掛けられます。交感神経優位による筋肉の緊張を自分なりの解消法で解決していくことが必要になります。

血流を良くするストレッチを取り入れる

眼精疲労の予防・改善には、目の周りの筋肉をほぐし、血流を良くすることが重要であることを確認してきました。特に一日中パソコンを使う仕事であったり、長時間車の運転をしなくてはいけなかったりすると、食事や睡眠など生活習慣を意識していても、毛様体筋の緊張は避けられません。

そのような場合は、定期的に近距離と遠距離のもの、横のものを交互に見て毛様体筋を刺激する習慣をつけましょう。

さらに、血流は身体全体につながっています。首や肩周辺の血流だけを意識せずに、足元の血流から良くすることを心掛ける必要があります。パソコンなどデスクワークでなかなか運動ができない環境でも、仕事をしながら足を床から浮かせて膝を伸ばし、かかとを上下させるだけでも足の筋肉は刺激され血流も良くなります。

そして、休憩の際には腰回り、肩や首全体を回したり動かしたりしながら筋肉を刺激し、滞りない血流をつくっていきましょう。

そのようなストレッチは同じ姿勢が続くときだけでなく、ストレスによる筋肉の緊張をほぐす際にも有効です。激しい運動でなくても、全身を使う軽いストレッチなどは毎日の習慣にしていきましょう。

眼精疲労に必要なDHA・EPA

ここまで筋肉の緊張をほぐし血流を良くすることで眼精疲労を予防・改善する方法を確認してきました。血流の改善に欠かせないものとして、さらにDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)があります。

「DHA・EPAは血液サラサラ効果がある」として有名ですが、どのように血管や血液に作用することで血流を良くするのでしょうか。

血管や血液中の赤血球は膜で覆われています。その膜を構成しているのが脂質であり、脂質の中でDHA・EPAが多く存在していると、しなやかな膜が作られます。血管膜や赤血球膜がしなやかになれば、血液は流れやすくなります。

一方、膜を構成している脂質の中で、オメガ6脂肪酸(サラダ油など)が多いと、血管膜や赤血球の膜は硬くなり、血液は流れにくい状態となります。

さらに惣菜やお菓子などに含まれている「酸化されているオメガ6脂肪酸」が血液中に多い状態では、過酸化脂質が増え、血管中に血栓ができやすくなります。その結果さらに血液は流れにくくなります。

目の細胞まで滞りなく血液を流すには、酸化されていないオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を積極的に摂取しながら、オメガ6脂肪酸(サラダ油など)の摂取を控える必要があるのです。

ホットアイマスクなどは眼精疲労に効果的なのか

眼精疲労を緩和するアイテムとしてホットアイマスクがあります。ホットアイマスクは名前の通り、目の部分を温めるために使用するマスクです。

目の周辺を温めることによって、血管は拡張して、血液は流れやすくなります。お風呂の湯船に浸かった後、じんわりと身体中が温かくなって、血流が良くなっている経験をしたことがある人は多いかと思います。その効果と同じで、ホットアイマスクは目元を温めることで血流をよくする作用があります。

ホットアイマスクもお風呂も、熱すぎて一気に発汗が促進されるような状態では、交感神経が優位になり血管は収縮してしまいます。しかし、心地の良い温度でじんわり温まる程度であれば、血流改善の効果が認められているのです。

そのため、自宅の電子レンジなどでタオルを温めて、手作りアイマスクを使用する際は、温めすぎには注意しましょう。また、アイマスクを長時間使用し、冷めてきた状態で使い続けると、逆に血管は収縮してしまうので、温かく感じなくなったら使用をやめましょう。

また、充血しているときや目の周りに痛みやかゆみがあるときは、目元が炎症している証拠となります。炎症反応が起きている際に、ホットアイマスクによって血流を良くしてしまうと、免疫細胞はさらに活発に働き、炎症の症状(痛みやかゆみ)がひどくなってしまいます。

炎症が起きているときは、「炎症を抑制するDHA・EPAを摂取する。炎症を促進するオメガ6脂肪酸を控える」など、油の摂り方を見直した上で、ホットアイマスクの使用を控えましょう。

さらに目薬や目元の塗り薬を使用した直後などのホットアイマスクの使用も注意が必要です。薬を使用した直後に血流が良くなることで、かゆみなどの炎症を起こす場合もあります。薬を使用する場合は、時間をおいてからホットアイマスクをするようにしましょう。

このように、ホットアイマスクは血流の改善に効果的だといえますが、眼精疲労の改善に対してはあくまでも一時的な効果にしかなりません。

眼精疲労を引き起こしている毛様体筋の使い方、全身の筋肉の緊張や血流の改善を心掛けることで、眼精疲労から生じる頭痛や吐き気なども抑えることにつながります。

まとめ

ここでは眼精疲労から起きる身体の症状を緩和するために必要なことを述べてきました。眼精疲労の予防のポイントとなるのはピントを合わせる毛様体筋の緊張です。

パソコン作業や運転など、同じ姿勢で一カ所を見ることを長時間続けていると、毛様体筋は凝り固まって緊張状態になります。筋肉の緊張をほぐすには、自律神経のバランスやストレッチなどによる筋肉の刺激、運動、睡眠などを心掛ける必要があります。

さらに眼精疲労を予防するには、血流を良くすることが重要です。特に血管の炎症状態を左右する脂質の摂り方には注意が必要です。炎症を抑制・収束されるオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を積極的に摂取し、炎症を促進させるオメガ6脂肪酸(サラダ油など)はできるだけ摂取を控えなくてはなりません。

眼精疲労に効果があるとされるアイテムやサプリメントはドラッグストアなどでよく見かけます。しかし、目元だけに重点をおいていても眼精疲労の根本的な解決にはなりません。全身の筋肉や血液の状態、炎症の状態に目を向け、眼精疲労を引き起こさない身体を作っていきましょう。