健康診断などでコレステロール値が高いと、高コレステロール血症や高脂血症としてコレステロール値を下げるよう指摘を受けます。コレステロールが血管内に蓄積すると動脈硬化を引き起こし、命の危険があるからです。

「コレステロールは身体にとって良くないもの」という認識が広まっており、動脈硬化が起きるメカニズムを理解していないまま、コレステロール値だけを下げるよう意識している人も多いです。

しかし、コレステロールは身体にとって悪者ではありません。むしろコレステロールが不足すると、さまざまな不快な症状を引き起こします。

ここではコレステロールと動脈硬化の関係を確認し、DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)が動脈硬化予防にどのように作用しているのか述べていきます。

コレステロールの体内での役割

コレステロールは体内に存在している脂肪分のことをいいます。脂肪分としては、コレステロールの他に中性脂肪があります。ただ、中性脂肪は身体のエネルギーに変換されますが、コレステロールはエネルギーへ変換されません。

コレステロールはエネルギーにはなりませんが、身体の機能を保つ重要な働きをしています。コレステロールの主な働きは以下の通りです。

  1. ホルモンの材料となる
  2. 細胞膜の材料となる
  3. 脂溶性の栄養を吸収するために必要な胆汁酸の材料となる

・ホルモンの材料となる

1.のホルモンとは、主に性ホルモンとストレス対抗ホルモン(コルチゾール)です。男性ホルモンも女性ホルモンもコレステロールから合成されています。

女性ホルモンのバランスが悪く、ホルモン剤(ピルなど)を取り入れている人も多いですが、性ホルモン不足から表れる症状には、コレステロール不足が原因になっている場合もあります。

またストレス対抗ホルモンとして作用するコルチゾールは体内でとても重要な役割を担っています。私たちは気温や紫外線、ウイルス・細菌、睡眠不足、人間関係、仕事・家事などから身体へのストレスを絶えず感じています。

身体がストレスを受けると、それに対して細胞はダメージを受けます。ダメージを受けた細胞は体内で有害物質と見なされ、免疫細胞によって排出しようとする反応が起きます。この反応が炎症反応です。炎症反応は、痛みやかゆみ、発熱、腫れなどの症状を伴います。

例えばウイルスが細胞内に侵入したときに、そのウイルスを排出しようと熱や痛みを出しながら免疫細胞が働きます。これが一般的に風邪といわれる炎症反応です。

このように身体にとって必要ないものを追い出そうとする炎症反応ですが、ストレスを受け続けていると健康な細胞までも次々と炎症されて、身体に不快な症状(痛みやダルさ、かゆみ、アレルギーなど)を引き起こしてしまいます。

そこで、ストレスを感じた細胞に対して炎症を抑制させるように働くのが、コルチゾールなのです。コルチゾールは身体に不快な症状を引き起こさないように、ストレスを受けた細胞に対して働きます。そのため、ストレス対抗ホルモンと呼ばれています。

アトピーなどの皮膚のアレルギー症状は、身体にかかるさまざまなストレスに対する過剰な炎症反応です。アトピーの塗り薬としてステロイド剤がよく処方されますが、ステロイド剤はコルチゾールから作られています。

このようにコルチゾールは必要のない炎症を抑制して、不快な症状なく生きていくためには欠かせないホルモンです。コレステロールが不足してコルチゾールが作られないと、生きていく中で絶え間なく降りそそぐストレスに身体が負けて動けなくなってしまいます。

・細胞膜の材料となる

2.また、コレステロールは身体中の細胞の膜を形成します。細胞膜の中で、コレステロールが膜を構成する部分は一部ですが、コレステロールは細胞膜を固めて有害物質の細胞内への侵入をガードする重要な役割を担っています。しっかり細胞膜の必要な部分にコレステロールが入り込まないと、有害物質が細胞内へ入ってしまうのです。

・脂溶性の栄養を吸収するために必要な胆汁酸となる

3.さらにコレステロールは消化液の材料となります。コレステロールから作られる消化液は胆汁酸と呼ばれ、脂質と脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収に必要な消化液です。

コレステロールの合成

このようにコレステロールは身体にとって欠かせない成分です。では、コレステロールは何からできているのでしょうか。

体内で働くコレステロールのほとんどは、脂質・糖質・たんぱく質を材料に肝臓で合成されています。コレステロールが合成されるとき、たくさんのエネルギーを使います。

そのため、休息しているときや、体内にエネルギーやエネルギー源がたくさんあるとき(食事の後など)にコレステロール合成は盛んになります。逆に言えば、有酸素運動をしているときやエネルギー源がないときはコレステロールが作られません。

このときのエネルギー源とは、具体的には糖分のことを指します。

また、「卵(コレステロールが多い食品)を食べるとコレステロール値が上がる」という認識がありますが、そのような事実はありません。食事で摂取したコレステロールがそのまま体内で働くのは、コレステロール全体の20~30%です。

肉や卵に多くコレステロールは含まれていますが、それらの食品をたくさん食べたからといって、体内のコレステロール値が高くなるわけではないのです。

それどころか、肉や卵などコレステロールが多く含まれている食品をよく食べると、体内ではコレステロールを一定に保つための機能(恒常性)が働き、肝臓で合成されるコレステロールの量が抑制されます。

つまり、コレステロールの過剰な合成を抑えるためには、卵や肉の摂取を控えることは必要ではなく、有酸素運動をして、エネルギー源となる砂糖など糖質の摂取を控えることが必要なのです。

ただ、糖質は身体にとって必要な栄養素なので、糖質全体を控える糖質制限は行う必要ありません。身体にとって必要のないお菓子や清涼飲料水の糖分を控えつつ、有酸素運動を取り入れることで適切なコレステロール値を目指しましょう。

このようにコレステロール自体が動脈硬化を引き起こすわけではありません。コレステロール自体は前述の通り、身体の機能調節にとても重要な成分です。では、なぜ健康診断などでコレステロールを下げるように指導されるのか、述べていきます。

LDL(悪玉)コレステロール値を下げるにはどうすれば良いか

コレステロールが動脈硬化などの病気につながる理由を確認する前に、LDL・HDLコレステロールについての理解も必要となるため、述べていきます。

血液検査では総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロールの数値が示されます。特にLDLコレステロールは悪玉コレステロールという認識が一般的にあり、数値を下げるよう指導されます。

では、LDL・HDLコレステロールとは何なのでしょうか。コレステロールは脂質であるため水に溶けません。コレステロールが血液中に存在するために、たんぱく質と結合しなくてはいけないのです。そのようにたんぱく質と結合したコレステロールをLDL・HDLコレステロールと呼びます。

肝臓で合成されたコレステロールを全身の細胞まで運ぶのがLDLコレステロールです。LDLコレステロールの存在箇所は主に血液中です。LDLコレステロールが悪玉コレステロールと呼ばれるのは、LDLコレステロールが増え過ぎて血液中に長く留まると、血栓を発生させ動脈硬化へつながるきっかけになるからです。

ただ、あくまでもLDLコレステロールが増えただけでは動脈硬化にはなりません。LDLコレステロールが血管の傷(炎症箇所など)に蓄積し、さらにそのコレステロールが酸化されると血栓となり、動脈硬化につながります。コレステロールが酸化される詳細については次の見出しで述べます。

そして、HDLコレステロールは細胞にある余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す働きをしています。コレステロールの蓄積を防ぐため、善玉コレステロールと呼ばれ、健康診断ではHDLコレステロール値が高いことが求められます。

HDLコレステロールによって肝臓に戻されたコレステロールは、胆汁酸やLDLコレステロールとして再利用されます。

一般的な認識では、LDLコレステロールは悪玉であり、HDLコレステロールが善玉であるため、健康診断ではLDLコレステロール値が高いこと、HDLコレステロール値が低いことが問題とされています。

しかし、コレステロールに善玉や悪玉があるわけではなく、あくまでもLDL・HDLはコレステロールを運んだり回収したりするたんぱく質なのです。そのため、LDL・HDLコレステロールの数値を正常にするためには、たんぱく質をしっかり摂取し、コレステロールの管理役である肝臓を疲れさせないことが重要です。

肝臓は有害物の解毒や分解、栄養素の合成をする臓器であるため、機能低下を防ぐには、「アルコールや薬、添加物の摂り過ぎを防ぐ」「睡眠をしっかりとる」「ストレス解消を心掛ける」ことがポイントになります。

また、LDLコレステロールが血液中に多くなることで、血液検査のLDLの数値が高くなります。LDLコレステロールは血液中から細胞内へ運ばれなくては、上で述べたようなコレステロールとしての働きができません。

特に「コレステロール → コルチゾール(ストレス対抗ホルモン)」の変換は細胞内で行われるため、ホルモンを合成するには、血液中からしっかり細胞内へコレステロールが取り込まれる必要があります。

しかし、細胞を囲んでいる膜(細胞膜)が硬くもろい状態になっていると、せっかくLDLによって運ばれてきたコレステロールも細胞内へ取り込まれません。その結果、血液中にLDLコレステロールとして残ってしまい、ホルモンが合成されないだけでなく、LDLコレステロール値が高くなってしまうのです。

 

細胞膜は脂質で作られており、膜を硬くもろい状態にしてしまうのは、膜を構成している脂質の酸化です。脂質の酸化は、調理してから時間が経っている油料理(惣菜、加工食品、お菓子、コンビニ食品、外食など)を摂取することが原因になります。

さらに、体内の活性酸素が増えることでも、細胞膜に存在している脂質は酸化されてしまいます。活性酸素はストレス、寝不足、運動不足、紫外線、栄養不足、加齢などで増えます。生きている限り活性酸素が増えることは避けられませんが、抗酸化物質を積極的に摂ることで活性酸素の増加を防げます。

抗酸化物質は野菜や果物、魚介類などに多く含まれているビタミン類(A・E・C)やポリフェノールなどです。また、サプリメントでDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)を補う場合は、ビタミンEなどの抗酸化物質が添加されているものを選びましょう。

このように細胞膜の酸化を防ぐことを意識し、LDLによって運ばれてきたコレステロールをしっかり細胞内へ取り込むことによって、血液中のLDLコレステロールの増加を抑えるようにしましょう。

コレステロールと動脈硬化はどう関係しているか

ここまでコレステロールの働きや血中LDLコレステロールの増加を抑制するために必要なこと(細胞膜の酸化防止)を確認してきました。

コレステロール自体はホルモンや消化液の材料となり、身体にとって重要です。ただ、血液中に増え過ぎたコレステロールが蓄積して動脈硬化につながると、血液が流れにくくなってしまいます。それどころか、血栓が心臓や脳の周りにできると、心疾患や脳血管疾患になり、命の危険性もあります。

そのため動脈硬化は防がなくてはいけません。コレステロールが動脈硬化につながるメカニズムは以下の順です。

  1. 血管に傷がつき、そこにコレステロールが付着する
  2. 血管に付着したコレステロールが酸化して血栓となる

血管に傷が付くのは、血液中の糖が多くなって糖とたんぱく質が結合した糖たんぱく質が原因になります。また、血管が炎症している箇所も傷となります。そのように傷がついた箇所に血液中のコレステロールは集まりやすくなり、かたまりができます。

そして、血液中に集まってかたまりとなったコレステロールが活性酸素によって酸化されると、血栓がつくられ、動脈硬化につながるのです。

そのため、血管の動脈硬化を防ぐには「糖の摂り過ぎ」「炎症を抑制する」「酸化を防ぐ」ことがポイントになります。

身体に発生する炎症はオメガ6脂肪酸(サラダ油など)の摂取で促進され、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の摂取で抑制されます。加工食品や惣菜、お菓子などに多く含まれるオメガ6脂肪酸は、無意識のうちに過剰摂取になりがちなので、摂取を控えるようにしましょう。

同時にオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は魚料理やサプリメントから積極的に摂取するようにしましょう。そして、活性酸素の発生を抑制し、酸化を防ぐようにすることで、血液中のコレステロールが動脈硬化につながることを避けられます。

動脈硬化を防ぐためには、「いかにコレステロールの酸化を防ぐことができるか」が重要になります。野菜や果物、魚介類を意識的に摂取し、身体の炎症や糖化を防ぐことを意識しましょう。

動脈硬化を予防するDHA・EPA

前述のとおり、動脈硬化を防ぐにはコレステロールの酸化を避けることが重要です。さらに、動脈硬化を防ぐためにはDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)の摂取が効果的です。その理由は以下の通りです。

  • 血管の膜をしなやかにしてコレステロールの付着を防ぐ
  • 細胞膜をしなやかにしてコレステロールや糖の細胞内への取り込みをスムーズにする
  • 炎症を抑制する

血液が流れる血管は膜で覆われています。その膜にDHA・EPAが多く存在していると、血管膜はしなやかな状態となり、コレステロールが付着して血栓を形成するのを防ぎます。

また、細胞膜に対しても同様のことが言えて、細胞膜にDHA・EPAが多く存在していれば、しなやかな膜が形成され、コレステロールや糖がしっかり細胞内へ取り込まれるようになります。

血液中の糖やコレステロールが細胞内へ取り込まれれば、血管に傷をつける原因となる糖の過剰を防げ、コレステロールの蓄積も避けられます。

ただ、いくらオメガ3脂肪酸が多い細胞膜でも、その脂肪酸が酸化されていたら逆効果になってしまいます。そのためオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の摂取と共に、抗酸化物質も積極的に摂り入れる必要があります。

また、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は血管の細胞の炎症を抑制する脂肪酸でもあります。血管に炎症があるとコレステロールが蓄積しやすくなるため、DHA・EPAを積極的に摂取すると共に、炎症を促進するオメガ6脂肪酸(サラダ油)の摂取を控える必要があります。

このようにオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は血管や細胞膜の状態を良好に保つことによって、コレステロールが酸化して起きる動脈硬化を予防することにつながります。

世界中で行われているオメガ3脂肪酸の研究では、「DHA・EPAの摂取と心疾患予防」についてたくさんの報告がされています。「DHA・EPAが心疾患や脳血管疾患などの動脈硬化に効果がある」とされているのは、このようなメカニズムがあるためです。

ストレスが多くなるとコレステロール合成が多くなる理由

ここまで、コレステロールの働きとコレステロールの酸化が引き起こす動脈硬化について確認してきました。コレステロール自体は身体に必要なものであっても、基準値より高いコレステロール値であるならば、肝臓で合成され過ぎている可能性があります。

前述の通り、コレステロールはホルモンの材料となります。主に、「ストレスが身体にかかっているときに、細胞を守るために働くコルチゾール」と性ホルモンを合成します。

例えば、過剰なストレスが身体にかかっているときは、コルチゾールが多く必要になります。そのため、コルチゾールを多く作るために、コレステロールも多く合成されるようになります。

つまり、ストレスを多く受けている環境ではコレステロール値が高くなってしまうのです。

ただ、「コレステロール → コルチゾール」の合成にもエネルギーが必要になります。ダイエットや糖質制限などでエネルギー不足になっていると、コレステロールからコルチゾールの変換ができません。

また、ストレス過多によるコルチゾール分泌過剰によって、コルチゾール分泌を管理するところ(副腎)が疲労していても、コルチゾールへの変換ができなくなります。

そうなると、必要なのにコレステロールからコルチゾールが作られなくなり、体内にコレステロールが残ってしまうのです。「痩せているのにコレステロール値が高い場合」「ストレスの多い環境の人」などは、コレステロールからコルチゾールが作られなくなっている可能性があります。

このように、ストレス(人間関係・気候・睡眠不足・紫外線・仕事など)が身体に多くかかっていると、コレステロール値が高くなります。

ほかにも「太り過ぎ・肥満体質」「運動不足」「肝臓機能低下」のときもコレステロールが肝臓で合成されやすくなります。

まとめ

ここでは、コレステロールが身体に必要な理由と、コレステロールの蓄積による動脈硬化を予防する方法を確認してきました。

コレステロールはストレスによるダメージから細胞を守る大事なホルモンの材料となります。他にも性ホルモンや消化液の材料となるなど、身体にとっては欠かせない脂肪分です。

そのコレステロールが動脈硬化になる原因は、「糖の摂り過ぎ」「炎症」「酸化」「血管膜や細胞膜のもろさ」などです。特にLDLコレステロールが増えるのは、肝臓の機能低下や細胞膜の硬化が関係しています。

ストレスや寝不足、栄養不足を避け、しっかりコレステロールが「血液中 → 細胞内」へ取り込まれるように心掛けましょう。

また、血管膜や細胞膜をしなやかにするDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)を積極的に摂取し、さらに酸化を防ぐ抗酸化物質の摂取も心掛けましょう。

健康診断で高コレステロール値と診断され、生活習慣を改善せずにコレステロール値を下げる薬だけ飲んでいても、コレステロールの問題は解決しません。それどころか服薬によりコレステロールが合成されにくくなれば、身体にとって健康的ではありません。

薬でコレステロール値だけを下げる前に、生活習慣を改善し、コレステロールが体内でしっかり働ける身体作りをしましょう。その結果、ストレスに負けない細胞が作られ、コレステロール値の改善にもつながります。