がんに対してはさまざまな健康法が存在します。「この食事法で末期がんが消えた」「ビタミン注射ががんに効果的だ」など、がん経験者が改善法を発信したり、研究結果が発表されたりとがん治療の情報はあふれています。

がんといえば「命にかかわる病気」とイメージしている人が多いため、がんと診断された際はありとあらゆる改善法を探す人が多いです。数多くの研究がされ、がんに対する情報が多くなっているのはそのためです。

ただ、がんと診断されてから、また知り合いががんになってから治すための情報を調べる人は多いですが、健康なときから「がん予防のために」と普段の生活を意識している人は少ないです。自分には関係がない病気だと思われがちなのです。

しかし、現代人の3人に1人はがんで死亡する時代といわれています。がんは診断されてから対処法を考えるのではなく、普段から予防するべき病気です。

ここでは、がんが体内に発生するメカニズムから、予防法まで述べていきます。また、がんの予防には、「体内にどのような脂肪酸の割合が多いか」がポイントになるため、油の摂り方について詳しく確認していきます。

がん細胞が発生するメカニズム

私たちの身体は何十兆個もの細胞が集まってつくられています。骨も皮膚も髪の毛も細胞の集合体です。その細胞は日々作り替えられたり、増殖したりしています。例えば、ケガをすると修復するための細胞が作られ、治ると細胞の増殖は止まります。

また、細胞が作り替えられるサイクルは体内の箇所でさまざまであり、胃や腸の粘膜は3~7日、皮膚は28日、骨は数年で新しい細胞に生まれ変わるとされています。ただ、年齢や生活習慣によって作り替えられるサイクルが長くなるため、正常な細胞を作るには食習慣や運動習慣など規則正しい生活が鍵を握ります。

毎日細胞が作り替えられている中で、実はがん細胞も日々作られています。約60兆個ある全身の細胞のうち、毎日1000~5000個はがん細胞として発生しています。しかし、身体に備わっている免疫機能により1つ残らず発生したがん細胞は退治されるため、簡単にがんになることはありません。

では、がんになるにはどのようなことが体内で起きているのでしょうか。これには、以下のようなものがあります。

①がん細胞の発生率が高くなったとき

②体内の免疫機能が弱くなったとき

この①か②の体内状態になったときに、がん細胞は増殖し始めます。さらに、がん細胞は正常細胞よりも増殖するスピードが速いため、一度がんになると、正常細胞ががん細胞にどんどん攻撃されてしまいます。

①の「がん細胞の発生率が高くなるとき」というのは、急に発生率が高くなるときがくるというわけではありません。普段の食べ物、生活習慣(運動や睡眠)、ストレスなどさまざまな外的要因によって、徐々に正常細胞の遺伝子が傷つき、がん細胞の発生率が高くなるのです(遺伝子変異)。

正常細胞の遺伝子変異が起こり、その細胞が増殖することでがんは大きくなり、健康診断などで見つかる大きさになります。そのため、がん細胞発生の外的要因が増えれば、発生率は高くなり、増殖しやすくなるのです。

しかし、身体に備わっている免疫機能が正常に働いていれば発生したがん細胞の増殖を防ぐことができます。

私たちの身体は、「免疫」によって守られています。免疫とは、体内に入ってきた細菌やウィルスなど身体にとって「害のあるもの」と認識されたものを排除する機能のことです。この免疫機能によって遺伝子変異が起きているがん細胞は「異常細胞である」と認識され、攻撃排除されます。

そのため、②の「免疫機能が弱くなっている」と異常細胞であるがん細胞を攻撃しきれなくなり、がん細胞が増殖してしまうようになります。

また、がん細胞によっては免疫機能による攻撃に対して、自分の細胞を守ろうとする働きをしているものがあると分かっています。そのためがん発生を抑制するためには、免疫機能を高めるだけでなく、がん細胞の発生率を抑えることも非常に重要になってきます。

がん細胞の増殖を促す食べ物

では、がん細胞発生の要因となる食べ物について確認していきましょう。私たちの細胞は食べたもので作られています。細胞の増殖も再生も食べた物の栄養がもとになって行われます。特にがん細胞は正常細胞より栄養の要求性が高く、多くの栄養素を取り込んで増殖していきます。

さまざまな栄養の中でも、がん細胞が好んで摂取するものはブドウ糖とされています。ブドウ糖とは、砂糖、小麦製品(パン・麺・お菓子など)、白米など糖質から分解された栄養素です。ご飯やパン、麺などを食べると、胃腸で消化吸収され、ブドウ糖となって血液にのって細胞まで運ばれます。

血液によって運ばれてきたブドウ糖は、全身各所にある細胞に取り入れられ、エネルギー源となります。しかし、がん細胞は正常細胞の3~8倍ものブドウ糖を取り込まなければ生存できないとされています。そのことから、「ブドウ糖のもととなる糖質を極力摂らないようにしましょう」というがん治療法が流行りました。

その理由としては、ブドウ糖のもととなる糖質を食べ物から摂取しないことで、体内の脂肪からケトン体というエネルギー源が分解され、ブドウ糖の代わりにエネルギー源として使われます。正常な細胞はケトン体をエネルギー源として使用できますが、がん細胞はケトン体をエネルギー源として使えません。

がん細胞はブドウ糖が少ない体内では生存できないため、がん細胞は増殖できないとされているのです。この見解が「極力糖質を摂取しない」という糖質制限食はがんに効果的であるといわれている理由です。

しかし糖質制限食では、ご飯やパンなどの糖質を摂取しない代わりに、たんぱく質や脂質をエネルギー源として多量に摂取しなくてはいけません。糖質を摂取できないと全体的にエネルギー不足となり、正常細胞まで生存できなくなるからです。

そのために、肉や魚、バターや油などのたんぱく質や脂質を多量に摂取しなければいけません。しかし、肉やバターなどに含まれている脂質や多量の動物性たんぱく質は、腸粘膜を傷つける原因になります。

さらに、肉や魚を分解するために胃での消化液や消化酵素も多量に必要となり、胃の負担も大きくなります。過剰なたんぱく質や脂質は肝臓や腎臓にも負担となり、良好な血液が作られないため、正常細胞を健康に保てません。

確かに、砂糖を使用する食品(お菓子)や、糖分が多い飲料、小麦製品はがん発生を促します。そのような糖質が多い食品をよく食べる習慣がある場合は血糖値が上がりやすく、血糖値の影響でインスリン(血糖値を下げるホルモン)が多量に分泌されます。

腸から吸収されたブドウ糖は血液の中に入り、全身を流れます。砂糖などを普段から多く摂取し、血液中のブドウ糖の量が多い場合は、多量にインスリンが分泌され、がん細胞にもブドウ糖が多く取り込まれてしまいます。

また、常に多量にインスリンが分泌されていると、次第にインスリン分泌がされにくくなり、血液中にブドウ糖が取り残されるようになります。すると、血液の流れは悪くなり、細胞に必要な栄養が流れにくくなることで、正常な細胞にも影響がでてきます。

このような理由で、がんの予防としては糖質の摂り方を意識する必要があります。ただ、極端な糖質制限は避け、3食の食事の際には5分付き米(白米と玄米の間)や芋類、果物などエネルギー源となる良質な糖質をバランスよく摂取することが大切です。

また、数多くある添加物や料理の際の焦げなどについて、「発がん性がある」と認識している人は多いかと思います。しかし、発がん性があることで有名な亜硝酸ナトリウム(ウインナーなどに含まれる発色剤)や合成甘味料を食べたからといってがんになるわけではありません。

当然、毎日大量に食品添加物を摂取していれば、解毒に関わる肝臓にも吸収する腸にも負担となり、身体にとって良いことはありません。しかし、食品添加物に恐怖心をいだきながら食事をするストレスの方が、身体の負担となります。

インターネットや書籍からの情報で「○○は発がん性がある」「○○を食べたらがんが消えた」という内容を見かけることは多いかと思います。しかし、がん予防の基本はバランスの良い食事とストレス対策です。「何かを食べたからがんになった」「何かを食べればがんが治る」というものはありません。

「バランスの良い食事」というと、都合のいい言い方に聞こえるかもしれませんが、極端な偏りがなく、まんべんなく食品を摂取することが重要になります。

例えば、摂取した栄養素を腸からスムーズに吸収するには、腸内環境が整っている必要があります。そのため、腸内の悪玉菌を増やす「砂糖、小麦製品、加工食品、サラダ油」の摂取は控えるべきです。

また、血行を良好にしないとスムーズに栄養を運べません。血液が流れにくい状態にするものも、砂糖やサラダ油です。そのため、がんを予防するにはお菓子、糖質含有飲料、加工食品、惣菜、ジャンクフード、低価格な外食、コンビニ弁当の過剰摂取は避けるべきです。

正常な細胞にはたくさんの栄養が必要です。砂糖やサラダ油のように、細胞に必要な栄養の働きを阻害する食事を控え、普段からバランスの良い食事を心掛けましょう。

がん細胞を抑制する食べ物

「がん予防にはバランスよく食べましょう」と述べましたが、がん細胞の発生を抑制する可能性がある食べ物があります。それは抗酸化物質が含まれている食べ物です。

私たちが体内に取り入れた酸素は、体内で行われるさまざまな分解や合成のもととなります。しかし、取り入れた酸素のうち、数パーセントは活性酸素になり、細胞を傷つけさまざまな病気や老化を引き起こします。

がんの発生にも活性酸素は影響しています。活性酸素は細胞膜に存在している脂質と反応すると、過酸化脂質を生成させます。細胞膜の脂質が過酸化脂質となると、膜の機能が弱まり、正常細胞はさまざまな害を受けます。また、活性酸素により細胞の中の遺伝子が傷つけられると、突然変異し、がん細胞となるのです。

活性酸素は加齢、ストレス、運動不足、大気汚染、たばこ、酸化された食べ物などにより体内で増えます。その活性酸素の害を防いでくれるのが抗酸化物質です。

抗酸化物質は、酸化ストレスから私たちの身体を守るために本来備わっているものです。しかし、活性酸素の発生が体内の抗酸化物質を上回ると、身体は害を受けます。

抗酸化物質は食べ物によって補えます。活性酸素はストレスや加齢など防ぐことのできない環境で増えてしまいます。そのため、日々の食事からしっかりと抗酸化物質を取り入れておくことが重要になります。主な抗酸化物質は以下の通りです。

〇フィトケミカル(カロテノイド・ポリフェノール・アスタキサンチン):野菜・果物・海藻・魚介類・香味類・赤ワイン・緑茶

〇ビタミンA・C・E:野菜・果物・イモ類・ナッツ・魚卵

〇コエンザイムQ10・αリポ酸:青魚・肉・大豆・緑黄色野菜

一時期、「がん対策に野菜スムージーがいい」と流行りました。これは、人参やリンゴに多くの抗酸化物質が含まれ、細胞を守る効果があるからだといえます。

普段から毎食の食卓に赤や緑などカラフルな野菜を取り入れることを意識し、がん細胞を発生させる可能性がある活性酸素の害から守りましょう。

また、食物繊維の摂取もがん予防には重要です。食物繊維には、現代人には避けられない添加物や農薬などの発がん物質を吸収して、体外に排出する働きがあります。野菜や海藻、きのこの摂取を心掛け、食物繊維を毎食取り入れるようにしましょう。

がん予防のための油の摂り方

ここまで、がん予防のための食事のポイントを述べてきました。実は、がん予防には油の摂り方も重要なポイントになるのです。油と一言でいっても、たくさんの種類があります。がん予防のための油の摂り方として油の種類を分類すると、以下の3つに分けられます。

〇摂りたい油:オメガ3脂肪酸(魚の油:DHA・EPA)

〇控えたい油:オメガ6脂肪酸(サラダ油、加工食品の含有油)・トランス脂肪酸(人工加工油脂)

〇過剰摂取を控えたい油:飽和脂肪酸(肉の脂、乳製品)

このように分けられる理由はさまざまありますが、がんの発生には「炎症の慢性化」が関わっています。炎症とは、食べ物、酸化ストレスなどによって身体のあちこちに発生し、長く続くことで身体にはさまざまな症状を引き起こすものです。炎症が体内で慢性化していると、細胞は傷つきやすくがんになりやすいです。

炎症を促進させる油がオメガ6脂肪酸(サラダ油)とトランス脂肪酸(マーガリン、加工油脂)であり、炎症を抑制・修復する油がオメガ3脂肪酸(DHA・EPAなど)です。そのため、がんの発生を予防するには、オメガ3脂肪酸が多く含まれている魚を積極的に摂取する必要があります。

しかし、魚をしっかり食べながら、オメガ6脂肪酸であるサラダ油が多く含まれている惣菜や加工品、お菓子なども食べていたら、結局は油の摂り過ぎになってしまいます。油は摂り過ぎると、活性酸素により過酸化脂質となります。

過酸化脂質は血管中にできると血栓となって血液の流れを悪くし、細胞内にできると老化の原因となります。そのため、過酸化脂質の生成を防ぐためにも、魚の摂取を心掛けると同時に、サラダ油や加工品の摂取は控えなければいけません。

現代人はオメガ6脂肪酸の過剰摂取に問題があるとされています。現代人が好む食生活では、オメガ6脂肪酸の摂取が目安量の何倍にもなるのです。

がん予防のための油の摂り方として、オメガ3脂肪酸を意識することは、炎症の抑制のためだけではありません。まず、オメガ3脂肪酸は細胞膜を柔軟にします。細胞膜が柔軟になることで、ひとつひとつの細胞内を健康な状態に保つことができ、がん細胞の発生を抑制してくれます。

逆にオメガ6脂肪酸や加工油脂、肉の脂(長鎖飽和脂肪酸)の摂り過ぎは、細胞膜を硬くし、細胞内を正常な状態に保つことが難しくなります。

また、がんの予防には血流も関係しています。正常細胞に栄養を運ぶにも、発生したがん細胞を排出するためにも、血液の良好な流れが重要になります。オメガ3脂肪酸であるDHA・EPAは血管をしなやかに保ち、赤血球の膜を柔軟にすることで、血流を良好にします。

このようにさまざまな理由から、がん予防にはオメガ3脂肪酸を積極的に摂るとともに、オメガ6脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を控えることが重要になります。

免疫機能を高めるポイント

がん細胞が増殖しにくい体内環境として、「免疫機能が正常に働く環境」があります。発生したがん細胞をしっかり攻撃するためです。免疫機能は、私たちの身体が健康でいられるためにもともと備わっているシステムですが、さまざまな条件でこの機能が高まったり弱まったりします。

免疫機能を高めるためには、高体温、高酸素状態の体内が基本となります。他にも、腸内環境やストレス対策、運動、睡眠なども免疫機能を上げるためには欠かせない条件です。

人間の身体は体温36.5℃で正常に働くとされています。体温が1℃下がると、免疫力も腸の働きも低下します。また、がん細胞は35℃で最も増殖するといわれています。現代人は低体温の人が多いです。体温は筋肉によって発生するため、基礎体温を上げるためには運動習慣をつける必要があります。

まずは1日30分程度のウォーキングから始めてみましょう。ウォーキングをするのであれば、夜よりも朝の時間帯がお勧めです。朝の太陽光をしっかり浴びることで、身体にある体内時計が整い、分泌されるべきホルモンも正常な働きをするようになります。

また、高酸素状態とは、身体の隅々まで酸素が行き渡っている状態です。細胞が再生するにも、エネルギーを作り出すにも酸素はなくてはならないものです。酸素を全身に運ぶのは血液です。血液の材料となる鉄やビタミン、魚油をしっかり体内に満たすことが重要になります。

毎日の生活を意識的にすることで免疫機能は高まります。運動習慣を生活に取り入れつつ、バランスの良い食事を心掛けましょう。本来の身体に備わっている「敵を排除して健康な細胞を保つ」という免疫システムを最大限に発揮させ、毎日発生するがん細胞が増殖する前に排除できる身体に作りあげておきましょう。

まとめ

がんに特効薬はありません。食べ物でも「これを食べればがんが治る」というものはありません。がんに対する情報はさまざまですが、基本はバランスの良い食事と運動、ストレス対策です。

もともと私たちの身体に備わっている働きを弱めなければ、発生したがん細胞が増殖する前に排除できます。また、多量にがん細胞が発生するのも防げます。

ポイントは体温を上げて免疫機能を働かせること、砂糖など糖質の摂り方に注意して細胞内にエネルギーとして働ける栄養素をしっかり届けることです。また、がん細胞発生に関わる活性酸素の害を防ぐために、野菜や果物から抗酸化物質をしっかり摂取することも重要です。

そして、身体に備わっている働きを弱めるものとして、サラダ油と加工油脂の過剰摂取があります。逆に、正常細胞ががん細胞に変異しないためには、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の積極的摂取が重要です。

オメガ3脂肪酸の摂取により、がん細胞の発生につながる炎症を抑制し、血行を良くすることで正常細胞を健康に保てます。

「これを食べなければがんにならない」など過激な情報に左右されず、食事も運動もバランスを重視することで、もともと身体に備わっている「細胞を健康に保つ力」を最大限に発揮できるようにしましょう。