「イライラする」といった感情が湧くことは誰でも経験があるものです。しかし、イライラに歯止めが効かなくなったり、小さなことでもすぐにイライラしたりしてしまう場合は、日常生活に影響を及ぼしてしまいます。頻繁にイライラの感情が起こることは健康的ではありません。

イライラなどのストレスは主に「出来事が自分の思い通りにならなかったとき」に感情として引き起こされます。その理由として外的環境によるストレスがあります。外的環境とは、人間関係、仕事、家事、天気、騒音、気温などがあり、どれも現代人には避けられないストレスです。

イライラを引き起こすもう一つの原因として、内因的な理由があります。内因的な理由には、栄養バランスの乱れがあります。

ここでは、「同じ外的環境によるストレスを受けてもイライラしにくい状態にするにはどうすれば良いのか」「内因的な理由である栄養バランスの乱れはどのようにイライラと関係しているのか」を確認していきます。

また、「魚の油であるDHA・EPAはイライラとどのように関係しているのか」についても述べていきます。

イライラする原因とは何か(外的環境によるストレス)

ではまず、外的環境によるストレスから起こるイライラについて確認していきます。例えば、次のような場面があったとします。

「一緒に食事をしている相手がクチャクチャ音をたてながら食べていたため、イライラしてきた。我慢して食べていたが、音が気になり食事が美味しく感じないので、相手にそのことを伝えた」

このような場合、クチャクチャ音をたてながら食べる行為自体にイライラする人、しない人に分かれます。また、咀嚼の音に対して注意を受けた側も、「怒られたと感じてイライラする人」と「注意をしてくれたと考えてイライラしない人」に分かれます。

同じ出来事に対してもストレスを感じるかそうでないのかは、何が違うのでしょうか。

「クチャクチャ音をたてて食べる」という行為が自分の価値観の枠に当てはまっていなかった場合に、その行為に対してのイライラが起きます。

例えば子供の頃から「音を立てて食べてはいけない」「クチャクチャ噛むのはマナーとして良くない」などと言われて育ってきた場合、脳の中には「咀嚼音をたてること=良くないこと」という価値観が出来上がっています。

そして、目の前で起きている出来事がその自分の価値観の枠から外れていた場合に、イライラなど負の感情が生まれます。

さらに、この食事が自分に対して大切だったとき(憧れのレストランでの食事など)には、「今回の食事=楽しみ」という方程式が脳内にできているため、それを壊されたと思い、イライラに拍車がかかります。

同じように、「人に迷惑をかけてはいけない」と育ってきた人は「人に迷惑をかける=良くないこと」という価値観が脳にできているので、他人に対して迷惑をかけている人や、自分に迷惑をかけてくる人に対してストレスを感じます。

このように、イライラするという負の感情は出来事に対して当たり前に起きることではなく、自分の価値観から大きく外れていた出来事に出会った場合に生じやすいです。自分の人生によって作り上げた価値観は、相手に当てはまるはずがありません。

そのため、「人の価値観は、全員違っているのが当然」という認識を常に持っていれば、外的環境によるストレスにイライラする頻度が減ってきます。

クチャクチャ音をたてて食べている人を目の前にしたとき、「このイライラは自分の価値観とのズレによって生じているだけで、相手自体が悪いことをしているわけではない」と認識すれば、食事を楽しめないほどの不快感はなくなります。

外的環境によるストレスでイライラしやすい人とは

では、上の咀嚼音の例の、相手側(注意をされた側)の感情を確認していきましょう。楽しく食事をしていて、自分では「良い」としている食べ方についていきなり注意をされたらイライラしますか?

同じことを言われても、キレてしまうほどイライラしてしまう人と、何とも思わない人に分かれます。その理由は何でしょうか。それは脳内にあります。ストレスにつながる物質が脳内にあるのです。

脳の中には千数百億個の神経細胞があり、神経細胞と神経細胞の間で情報を伝え合っています。感情につながる情報や行動するための情報を神経細胞に引き渡すことで、私たちの感情が生じ、行動するために身体を動かすことができます。

情報を神経細胞に運んでいる物質を神経伝達物質と呼びます。神経伝達物質は不安、緊張、爽快感、やる気、沈静、興奮、怒りなど感情の種類によって種類が変わり、確認されているだけでも100種類以上あります。

その神経伝達物質の中でイライラにつながる物質はノルアドレナリンです。脳内でノルアドレナリンが過剰に作られすぎていたり、逆に穏やかさにつながる神経伝達物質のGABA(ギャバ)やセロトニンなどが不足していたりすると、ストレスを感じやすくなります。

つまり、上のような「人から自分の行動について注意をされた」という突然の出来事に対して、キレたりイライラしたりしやすい場合はノルアドレナリンが過剰であり、GABAやセロトニンが不足している可能性があるのです。

ノルアドレナリンはストレスに反応して、怒り・不安・恐怖などの感情を引き起こします。そして交感神経(自律神経)を刺激し、心拍数や血圧を上げます。

「怒ると血圧が上がる」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、それはノルアドレナリンによって怒りを感じると同時に血圧上昇という作用があるからです。

ノルアドレナリンが普段から頻繁に出ているとストレス耐性(身体がストレスに耐える力)は低くなり、他の人はあまり気にならないような小さな音や物事などにもストレスを感じてイライラしやすくなってしまいます。そのような状態が続くと自律神経が乱れ、うつ病や不安障害など精神疾患にもつながります。

この仕組みが、「すぐイライラする」「キレやすい」という状態を作り出しているのです。「短気」と認識されているイライラしやすい状態は元から持っている性格ではありません。脳内物質の過不足によって作り出されているのです。

では、イライラにつながる神経伝達物質はどのように脳内で作られているのでしょうか。

ノルアドレナリンの作られ方(内因的な理由である栄養バランスの乱れ)

イライラしやすさの原因となるノルアドレナリンの過剰分泌には、普段の食事から摂取する栄養の過不足が関係しています。ノルアドレナリンをはじめ脳内の神経伝達物質は栄養素により合成されます。

ノルアドレナリンの元となるのはたんぱく質(肉、魚、卵、豆製品に多く含まれる)です。たんぱく質食品は胃で消化されてアミノ酸になります。アミノ酸は20種類ありますが、その中でもノルアドレナリンになるのはフェニルアラニンというアミノ酸です。

フェニルアラニンが脳内に運ばれ、そこで新たに鉄・葉酸・ナイアシン・ビタミンB6が加わることで、ドーパミンという神経伝達物質が出来上がります。ドーパミンはノルアドレナリンとは違い、やる気や爽快感、快感などの感情を伝えます。

そのドーパミンに(ミネラルの一種)が加わることでノルアドレナリンに変化します。ノルアドレナリンが不足すると、緊張感がなくなり集中力につながらないため、適度に変換されなければいけません。しかし、イライラしやすい場合は「ドーパミン → ノルアドレナリン」の変換が過剰になっている可能性があります。

つまり、「ドーパミン → ノルアドレナリン」の変換に関わる銅が体内にあり過ぎるとノルアドレナリンが過剰に合成されやすいです。体内では銅と亜鉛(いずれもミネラルの一種)は1対1になるように存在しているのが理想です。

しかし、現代人は亜鉛不足の人が多く、体内のミネラルバランスが「亜鉛<銅」となっている場合が多いです。特に加工食品の摂り過ぎ、魚介類の摂取不足、アルコール・チョコレートをよく摂取する場合は、亜鉛不足になるため、相対的に体内の銅が過剰になります。

また、女性ホルモンも銅を過剰にさせてしまいます。生理前にイライラしやすい人は「亜鉛<銅」の状態により、ノルアドレナリンが過剰になっている可能性があります。

イライラや不安が続く場合は、食生活を見直してみましょう。加工食品の摂取を控えて、魚介類をしっかり食べることで亜鉛と銅のバランスは保たれてきます。

やる気や快感はあまりないのに、イライラや不安はよく感じるという場合は、ドーパミンからノルアドレナリンの変換が過剰になって自律神経が乱れています。つまり、ドーパミン不足・ノルアドレナリン過剰になっている可能性があります。

ただ、「自分はノルアドレナリン過剰だ」と自己判断して、「銅>亜鉛」のアンバランスを改善しようと、亜鉛のみ配合されたサプリメントを摂取することは危険です。ミネラル(亜鉛・鉄・カルシウムなど)は「体内でのバランスを保つ」ことが非常に重要な栄養素です。そのため、亜鉛をサプリメントで補いたい場合はミネラルとビタミンが総合的に入っているものが良いです。

ここまで述べたように、意欲的に生きていくためにドーパミンはしっかり作られる必要があります。したがって、ドーパミンの元となる、フェニルアラニン、鉄、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6などの栄養素を補うためには、穀物、肉、魚、豆製品、野菜、海藻、果物などあらゆる食品をまんべんなく摂取する必要があります。

ドーパミンをしっかり作り出し、ノルアドレナリンの過剰合成を防ぐために、加工食品やアルコール、チョコレートなどの摂り過ぎに注意して、バランスの良い食事を心掛けましょう。それが、イライラしにくい脳を作りだします。

ストレスやイライラに効くDHA・EPA

イライラの原因となる神経伝達物質のアンバランスについて確認してきました。では、DHA・EPAはどのようにイライラに対して効くのでしょうか。DHA・EPAは魚に多く含まれている脂質であり、1日当たりサンマなら1尾、イワシなら2尾、ブリやサバは1枚食べれば摂取目安量が補えます。

「魚の消費量が多いほどうつ病の発症率が低い」

「DHAの摂取でキレにくくなる」

「魚を食べない国ほど殺人が多い」

このように魚やDHA・EPAの摂取と精神的安定に対してのデータは世界中でたくさん存在します。また、逆に調査の結果、DHA・EPAの精神安定へ与える効果はなかったという結果があるのも事実です。

DHA・EPAは体内の血管をしなやかな状態に保ち、血管内を通過する血液を通りやすい状態にします。また、血液を構成する赤血球の膜も柔軟にするため、血流の改善に効果的です。血流の良し悪しは脳内神経伝達物質を過不足なく作るために重要です。

それは、食事から摂り入れた栄養がしっかり脳内に運ばれることで初めてドーパミンやセロトニン(神経伝達物質のバランス調整役)などの神経伝達物質が作られるからです。

ノルアドレナリンの過剰はイライラや怒りにつながりますが、ドーパミンやセロトニンがしっかり作られないと、うつ状態になります。セロトニンはさまざまな神経伝達物質の過不足を調整する働きを担うため、セロトニン不足でもイライラしやすくなります。

そのため、血流が悪いと、食事で取り入れた栄養素がしっかり脳内に運ばれずに感情のコントロールに必要な神経伝達物質が作られないのです。

また、DHA・EPAは身体中の炎症を抑制する作用を有します。栄養素は腸の粘膜から吸収されるため、腸粘膜に炎症がある状態では栄養が吸収されにくくなってしまいます。現代人の食事はサラダ油の使用や糖質が多く、それらは腸粘膜に炎症を起こしやすくします。

「腸内環境を整えると心も安定する」といわれています。腸粘膜の炎症を修復することによって、栄養素が吸収されやすくなるため、感情のコントロールに必要な脳内神経物質が作られやすくなるためです。

脳内にも作用してイライラを緩和するDHA・EPA

さらに、DHA・EPAは細胞膜の状態を柔軟にします。細胞膜は細胞を囲っている膜であり、脂質で構成されています。脳内の神経細胞も同様に脂質の膜で覆われており、その膜が柔軟であると神経細胞と神経細胞の情報交換がスムーズに行われるのです。

イライラを抑え、感情をコントロールするためには、神経細胞同士の情報交換がスムーズである必要があります。そのために、DHA・EPAを魚料理やサプリメントから積極的に摂取して、細胞膜を柔軟にしておくことが重要です。

これらのことから、DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)の摂取が精神的安定に効果的だというデータにつながっているのです。逆に「魚を食べても精神的な変化はなかった」というデータの理由は、調査対象者のDHA・EPAの摂取よりもサラダ油や糖質の摂取の方が多かった可能性が高いです。

サラダ油に多く含まれているオメガ6脂肪酸はオメガ3脂肪酸であるDHA・EPAと体内で逆の働きをします。つまり、サラダ油の摂取が多いと、血液は流れにくくなり、腸粘膜には炎症を起こしやすくします。また、オメガ6脂肪酸は細胞膜を硬くすることで情報伝達をしにくくします。

オメガ6脂肪酸はサラダ油に多く含まれていますが、加工食品や惣菜、コンビニ食品、お菓子などの食品にも多く含まれています。加工食品の原材料を確認し、「植物油脂」と記入してあるものはサラダ油が含まれていることを意味します。

現代人の食生活では無意識のうちにオメガ6脂肪酸の過剰摂取になりやすいです。そのため、オメガ3脂肪酸をDHA・EPAから摂取していても、それ以上にオメガ6脂肪酸を摂取していては、精神的安定に対して効果がなくなってしまうのです。そういったことから、「DHA・EPA摂取の調査にて効果が見られなかった」という結果が生じます。

イライラを緩和して、感情をコントロールするには、DHA・EPAの積極的摂取を意識するとともにオメガ6脂肪酸であるサラダ油の摂取を控える必要があります。

いくらDHA・EPAが「ストレスに効く」「イライラに効く」とはいっても、サラダ油の過剰摂取状態では意味がないのです。

まとめ

「イライラしやすい」というのは、性格でも体質でもありません。イライラの原因は全て外的環境によるストレスのせいにしがちですが、ストレスは避けられるものではありません。生きている限りストレスは続きます。

「自分の思い通りにならないことは、自分自身の価値観が元になっていること」を認識しているだけでも、ストレスによるイライラを減らすことにつながります。

また、少しのことでもイライラしたり、キレたりしたりする場合は、栄養の過不足による内因的な理由である可能性が高いです。イライラなどの怒りを引き起こす神経伝達物質はノルアドレナリンです。イライラしやすい場合は「ドーパミン(快楽ホルモン) → ノルアドレナリン(イライラホルモン)」に変換され過ぎています。

「ドーパミン → ノルアドレナリン」への変換は体内の銅と亜鉛のミネラルバランスが鍵を握っています。普段から加工食品やお菓子を食べる頻度が高いと亜鉛不足になり、相対的に銅が過剰になります。その結果、銅と亜鉛のバランスが崩れ、ノルアドレナリンが過剰に合成されてしまいます。

脳内の神経伝達物質のバランスを整え、イライラしにくく、感情をコントロールしやすくするためには、偏った食事を避けまんべんなく食品を食べることが重要になります。

また、神経伝達物質をバランスよく合成するためには、DHA・EPAの摂取が欠かせません。摂取した食品の栄養をしっかり脳内で利用するためには、血流・腸粘膜・神経細胞膜の状態が良好である必要があります。

その全てにおいて良好な状態にするものがDHA・EPA(オメガ3脂肪酸)です。逆に血流を悪くし、腸粘膜の炎症を起こしやすくして、さらに神経細胞膜を硬くする油がサラダ油に多く含まれているオメガ6脂肪酸です。

魚料理やサプリメントからDHA・EPAの摂取を心掛け、加工食品やお菓子に多く含まれているサラダ油の摂取を控えることで、イライラしにくい日々を送るように心掛けましょう。