免疫力を高める方法として、「乳酸菌を摂る」「体温を上げる」などは有名ですが、免疫強化を意識しても風邪をひくときはあります。

仕事やイベントなどがあるとき、風邪をひくことは避けたいものです。特に、インフルエンザにかかると長期間外出を控えるべきとされ、予定が大きく変わってしまいます。

そもそも「免疫力が高い」とはどういう意味なのでしょうか。免疫反応とは、身体にとって有害なものを体外に排除する反応のことです。そのため、免疫反応が正常に働いていれば、体内に入ってきたウイルスや菌を排除する手段として発熱や咳といった症状が起きるのです。

逆に免疫反応が行われないと、体内に有害物質が入ってきても反応が起きません。反応が起きなければ、当然発熱もしません。発熱しない状態が何年も続いている場合、もしかしたら「風邪をひかない強い体質」ではなく、免疫反応力が弱い身体なのかもしれません。

そう考えると、「免疫力が強いということは、免疫反応がしっかり起きるということで、風邪ウイルスをしっかり排除するために発熱できる身体である」といえます。つまり、風邪をひくことが「免疫力が弱い」ということではないのです。それでは、実際の「免疫力が高い」とはどういう意味なのでしょうか。

ここでは、免疫反応の仕組みから、風邪予防に効果的なDHA・EPAについて述べていきます。そこから、「免疫力が強くて風邪をひかない」という意味を確認していきましょう。

免疫反応とは何か

免疫反応とは、もともと私たちの身体に備わっている「身体を守るシステム」です。この免疫システムがあるため、私たちは簡単に病気にはなりません。

人の身体には自分の細胞(自己)と外敵(非自己)を見分ける能力があります。非自己とは主に病原体であるウイルスや細菌、がん化した細胞のことです。非自己が体内に侵入したときに、いち早く見つけて攻撃排除するシステムが免疫反応です。

誰でも免疫システムをもっていますが、生まれつき免疫システムがうまく働かない病気の人や、白血病での化学療法(抗がん剤の投与)により免疫が機能しなくなった人は「無菌室」でないと生きていけません。それだけ空気中には、目に見えない無数の菌やウイルス、カビなどが存在しているのです。

免疫システムが働いていれば、毎日外敵と戦って身体を守ってくれるのですが、免疫がないと風邪のウイルスに出会っても命を奪われます。また、免疫は毎日発生するがん細胞もいち早く見つけて退治してくれますが、免疫が正常でないとがん細胞が増殖しやすくなります。

免疫細胞の働き

では、免疫は体内でどのように働くのでしょうか。免疫システムを構成しているのはいくつかの種類に分かれた免疫細胞です。体内に侵入した外敵を排除するまでの流れは以下の通りです。

①:常に体内を監視し、外敵(病原体など)を見つけるとすぐに攻撃する

②:①で排除できなかった病原体を①より強い武器を用いて攻撃する

③:①②で排除できなかった強い病原体に対して、敵の情報を記録した上で、最も有効な武器を用いて攻撃する

①の免疫細胞はマクロファージと呼ばれており、身体の中を24時間常にパトロールしています。外敵を見つけたら直接食べて退治することから、貪食細胞とも呼ばれています。即効性はあるものの、攻撃性は弱く取り逃す外敵も多いのが特徴です。

②の免疫細胞はナチュラルキラー細胞(NK細胞)と呼ばれており、ウイルスに感染した細胞ごと殺そうと働きます。また、がん化された細胞も見つけて攻撃します。ナチュラルキラー細胞はその細胞数が多いことよりも、働く能力(細菌などの異物を殺す働き)が高い細胞であるかどうかが、病原体を素早く排除できる鍵となります。

なお、少量の病原体が侵入してきた場合、そのまま攻撃排除することができますが、強い病原体や大量の病原体が侵入してきた場合は武器を使用しなくては勝てません。その武器というのが、発熱などの風邪の症状となるものです。熱という武器をもったナチュラルキラー細胞はパワーアップして、病原体を攻撃します。

この①②のマクロファージとナチュラルキラー細胞などは自然免疫に分類され、常に体内のパトロールをして「外敵を見つけたら、すぐ攻撃する」という特徴がある免疫細胞です。

③は①②の自然免疫に対し、獲得免疫に分類されます。③の免疫細胞は外敵に対してすぐに反応するわけでなく、①のマクロファージから病原体の情報をもらい、その病原体に合わせて特有の武器(抗体)を作成し、攻撃する免疫細胞です。

③は、病原体の情報をもとに指示を出す細胞(ヘルパーT細胞)、抗体をつくる細胞(B細胞)、病原体を攻撃する細胞(キラーT細胞)などに分かれます。一つの病原体に対し、その情報に対してそれぞれ抗体(武器)をつくるため、次に同じ病原体が侵入してきても抗体があることで即座に排除できるのです。

この原理を利用してインフルエンザや水ぼうそうなどの予防接種が行われます。予防接種によって病原体の情報を体内に入れることで抗体を作り、実際にその病原体が入ってきたときは、症状を軽くします。

インフルエンザの予防接種をうったにもかかわらず、「インフルエンザにかかってひどく発熱した」という場合は、予防接種とはウイルスの種類が違っていたため、作られていた抗体が武器として使われなかったということになります。

このように免疫細胞は自然免疫と獲得免疫に分類されます。瞬発力があり、侵入してきた敵に対して手あたり次第攻撃するのが自然免疫で、敵に対してじっくりその敵に合わせて武器を作ってから戦うのが獲得免疫です。獲得免疫が新たな攻撃態勢を整えるまでには5~7日かかるといわれています。

新しい敵に対しては瞬発力がないものの、侵入2度目以降の敵に対しては即座に武器を用いて戦うことができるのが獲得免疫の特徴です。自然免疫と獲得免疫は互いに情報を渡しながら協力し合わなければ、私たちの身体を健康に保つことができません。

そして、自然免疫と獲得免疫の情報交換を指示しているボス細胞が存在します。そのボス細胞を樹状細胞といい、この細胞が活性化していることが全ての免疫機能の強化につながります。

このように免疫細胞は、数多くの種類で成り立っており、それぞれが情報を交換しながら、協力していることが分かります。免疫機能を強くして健康を保つには、それぞれの免疫細胞の強化、免疫細胞同士の情報交換のスムーズさが重要になります。

発熱する仕組み

熱が出て「ヤッター!」と喜ぶ人はほとんどいないと思います。発熱といえば、「だるくて身体が思うように動かない」など良いイメージではありません。

しかし、ウイルスなどの病原体が体内に侵入したときに起こる発熱は、免疫の観点からいえば喜ばしいことでもあるのです。

通常、少量のウイルスや弱いウイルスに対しては、免疫細胞は何の症状も出さずに排除することができます。しかし、大量のウイルスや強いウイルス(インフルエンザウイルスなど)が体内に入ってきたときには、免疫細胞は武器を準備しないと攻撃しきれません。そのとき一番有効的な武器が「発熱」なのです。

ウイルスは体温35℃台で活発に動くことができ、熱が上がるほど活動できなくなります。そのため、ウイルスを効率よく攻撃排除するために、体温を上げてウイルスを弱らせます。さらに、体温が高くなると、免疫細胞(主にナチュラルキラー細胞)は活性化されます。

発熱によって活性化された免疫細胞によってウイルスは排除され、身体は平熱に戻ります。そのため、せっかく熱を出してウイルスを戦おうとしているところ、解熱剤などを用いて熱を下げてしまうと、免疫細胞は戦えなくなってしまいます。

特にインフルエンザなどの強いウイルスに解熱剤を用いた場合、「発熱」という武器を使用できない免疫細胞から逃げ切ったウイルスは、インフルエンザ脳症を引き起こす可能性があるとされています。

熱があると身体はしんどいです。しかし、細胞が身体を守ろうとして発熱している働きを解熱剤によって抑えることは避け、免疫細胞がウイルスと戦う様子を思い浮かべ、応援してあげましょう。

さらに、39℃の熱を出すことで、毎日発生しているがん細胞も死んでしまうとされています。高熱を出した後に下痢をする方は多いと思いますが、それは不要な細胞の死骸が大量に便として排出されている証拠です。その際も下痢止めでウイルスなどの排出を止めてしまわないようにしましょう。

発熱は仕事や生活にも支障をきたし避けたいものではありますが、年に数回であれば身体のデトックスとして乗り越えましょう。

免疫細胞を強める生活習慣

発熱が悪くないものだと理解できても、ウイルスが体内に侵入するたびに熱を出していては、生活しにくいです。同じ家族でも風邪をひきやすい人、ひきにくい人がいるかと思います。その違いは、免疫細胞の働く能力の違いでもあります。

主に生活習慣の影響を受ける免疫細胞は自然免疫です。そして、ボス細胞とされている樹状細胞も免疫強化の鍵を握っています。

以下は免疫強化に重要な生活習慣のポイントです。

①バランスの良い食事を摂る

②腸内環境を整える

③声を出して笑う習慣をつける

④活性酸素を増やさない

①の「バランスの良い食事を摂る」とはよく言われることですが、これは免疫細胞はじめ全ての細胞は食べたもので作られているからです。細胞の主成分はたんぱく質です。そして、細胞は油の膜で覆われているため、良質な油を摂ることも重要です。

特にDHA・EPA(魚油)などのオメガ3脂肪酸は良好な細胞膜をつくります。魚、卵、肉、豆製品、野菜など毎日の食事をバランスよくすることが、強い免疫細胞をつくることにつながります。

免疫細胞は一度作られたら、一生その細胞が使われるわけではありません。どんどん作り替えられています。そのため、日々の食事の内容によって強い免疫細胞になるか弱い免疫細胞になるかが変わってくるのです。

②腸内環境を整えることは免疫を強化することで有名です。その理由は免疫細胞の約7割が腸内に存在しているとされているからです。私たちの身体の中は約60兆個もの細胞でできており、その中で免疫細胞は2兆個ほどとされています。

2兆個のうち7割もの免疫細胞が腸内に存在しているのは、腸は食べ物や菌、ウイルスに対して常に隣り合わせであるからです。腸に送り込まれる食べ物の栄養素、化学物質、添加物、カビ、菌、ウイルスなどそれぞれが、身体にとって味方(自己)なのか、敵(非自己)なのかを見極めなければならないため、たくさんの免疫細胞が必要なのです。

つまり、数多くの免疫細胞が集合している腸内環境を整えることが、免疫機能を高めるポイントになります。乳酸菌が含まれる納豆、ヨーグルト、漬物などを毎日摂り入れ、野菜や海藻、きのこなどから食物繊維をしっかり補い、腸内の善玉菌を増やしましょう。

逆に、砂糖や酸化した油(調理して時間が経った油)は腸内の悪玉菌を増やす原因になります。また、砂糖や酸化油は腸内粘膜を傷つける原因にもなります。腸内粘膜が傷つくことによって体外からの敵が入りやすい体質になってしまいます。

すでに傷ついている腸内粘膜を修復するには、DHA・EPA(魚油)が有効です。DHA・EPAは炎症を修復する働きをするため、粘膜の傷を抑制修復してくれます。

③の笑う習慣については、笑うことでナチュラルキラー細胞が活性化されるといわれています。このことから、病院やクリニックでは患者に笑う習慣をつけるプログラムを実施している施設も多く見られます。

また、作り笑いでも効果はあるとされています。笑うときに注意したいことは、「声に出して笑う」ことです。実際に声に出すことで、脳内の快楽ホルモン(ドーパミン)が分泌されて、身体が感じているさまざまなストレスを減らすことにつながります。

免疫力を高めるにはストレスをできる限り少なくした方が良いですが、生活している限りストレスフリーの状態にすることは難しいです。声に出して笑うことで、ストレスから身体を守りましょう。

④の活性酸素とは、呼吸で取り入れた酸素のうち、体内で細胞を傷つける物質に変わってしまう酸素です。活性酸素は加齢、ストレス、睡眠不足、紫外線、偏った食事などによって増えますが、増え過ぎることで、免疫力の低下を引き起こすとされています。

また、野菜や果物、魚介に含まれる抗酸化物質は活性酸素による体内の酸化を防いでくれるため、毎回の食事で積極的に摂り入れることが重要です。

しかし、活性酸素も身体に悪い働きをするだけではありません。活性酸素は「病原体の感染に対する防御機能を高める」という働きをします。そのため、活性酸素の発生は基本的には防ぐ必要がありますが、過剰にサプリメントなどから抗酸化物質ばかりを摂取する必要はありません。

どんなに感染予防をしたり、免疫力を高めようと意識していても、寝不足が続いたり、いつもよりストレスを感じることが多かったりすると病原体に勝てない場合もあります。

風邪をひいてしまったことを「免疫力が弱い」として落ち込むことはありません。熱を出して戦える免疫力は備わっているのです。日々の生活習慣を整え、普段から病原体やがん細胞を排除できる免疫細胞を準備しておきましょう。

免疫細胞同士のチームワークを強めるDHA・EPA

このように個々の免疫細胞を強化することは大切です。しかし、免疫力は個々の免疫細胞だけではなく、免疫細胞同士のチームワークも非常に重要になります。免疫細胞同士で侵入した病原体の情報を受け渡しすることで、敵に対して効率よく戦うことができます。

その免疫細胞同士の情報交換をスムーズに行う鍵になっているのが、免疫細胞の細胞膜です。体内に侵入した病原体をいち早く見つける自然免疫から、抗体をつくる獲得免疫に病原体の情報を送るとき、情報を受け取る側の細胞膜が柔軟であることが重要です。

細胞膜が柔軟であることで、送られてきた情報の形に合わせてスムーズに受け取ることができます。細胞膜は脂肪酸で構成されていて、柔軟にする脂肪酸はオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)です。逆に細胞膜を硬くする脂肪酸はオメガ6脂肪酸(サラダ油など)です。

オメガ3脂肪酸もオメガ6脂肪酸も身体にとっては必要な油であり、どちらか一方だけ多くなってしまっていては良好な細胞膜となりません。良好な細胞膜が作られないということは、細胞が守れなくなってしまって細胞本来の働きができなくなります。

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は1:4のバランスで摂取すると良いとされています(厚生労働省より)。しかし、現代人は加工食品や外食で栄養を摂る割合が多く、オメガ6脂肪酸の摂取は過剰になっているといわれています。

オメガ3脂肪酸は魚を毎日摂取しない限り1日に必要とされている量は補えません。一方、オメガ6脂肪酸は意識して植物油脂を摂らないようにしないと、無意識のうちに過剰摂取になりがちなのです。

また、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸ともに酸化されやすい油です。体内に活性酸素が多い状態で魚やサラダ油を摂り入れていると、脂肪酸は酸化され、細胞膜には過酸化脂質が生じてしまいます。細胞膜に過酸化脂質が多い状態となると、細胞同士の情報交換もしにくくなり、免疫細胞としても働けなくなります。

オメガ3脂肪酸を魚料理やサプリメントから意識するとともに、活性酸素の過剰発生を予防する抗酸化物質(野菜や果物)を積極的に摂り入れることが重要です。

炎症を予防するDHA・EPA

ここまで、免疫反応の仕組みから免疫細胞を強化する方法まで確認してきました。ただ、免疫反応は風邪やがん細胞だけでなく、アレルギーにも大きく関係しています。

アレルギーは「本来であれば侵入してきても免疫反応を起こさせないもの(食べ物や花粉)」に対して、過剰に免疫細胞が反応して、攻撃してしまうことで起きる症状です。自己に反応することから「自己免疫疾患」ともいわれています。

アレルギーの症状は炎症として身体中にあらわれます。鼻や目の粘膜が腫れて鼻づまりや目のかゆみが表れたり、皮膚に湿疹となって表れたりします。そういった炎症を抑制する脂肪酸がオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)です。

逆にオメガ6脂肪酸(サラダ油)は炎症を促進するとされています。上述の細胞膜への脂肪酸の働きでもそうですが、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は基本的に体内で逆の働きをするのです。

オメガ3脂肪酸を積極的に摂取して炎症を起こしにくい身体にしておくことが、アレルギー症状を緩和させるポイントになります。

まとめ

免疫反応はもともと身体に備わっている、私たちの身体を守るシステムです。体外にある無数の菌やウイルス、体内から毎日発生するがん細胞から、健康を守るには免疫反応をしっかり機能させることが重要です。

免疫反応を高めるためには、生活習慣を整えて、自然免疫であるマクロファージとナチュラルキラー細胞を活性化させる必要があります。そして、自然免疫と獲得免疫間での情報交換をスムーズに行えることがポイントになります。

免疫細胞は食べた物の栄養から作られているため、バランスの良い食事は免疫細胞を強化する基本となります。また、免疫細胞が多く集まる腸内環境を整えるため、バランスの良い食事の中には、発酵食品やじゅうぶんな食物繊維も欠かせません。

さらに、腸粘膜の炎症をDHA・EPAの摂取により抑制しておくことも重要です。腸粘膜に炎症があれば、しっかりと栄養素を免疫細胞まで届けることができません。

そして、免疫細胞同士の情報交換では、免疫細胞の細胞膜を柔軟に保つことが情報伝達のスムーズさに影響します。オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)とオメガ6脂肪酸の摂取バランスによって、細胞膜の柔軟さが変わってくるため、魚料理やサプリメントからオメガ3脂肪酸の毎日の摂取を心掛けましょう。

免疫反応は栄養だけでなく、ストレスや活性酸素にも大きく影響を受けます。また、普段除菌され過ぎた中でばかり生活していると、菌やウイルスに触れる機会が極端に少なくなります。普段菌に触れる機会が少ないと、電車やショッピングモールなどに行くだけで、感染しやすくなってしまいます。

したがって、普段の生活から免疫細胞に「菌慣れ」させておいておくことも重要になります。除菌ばかり気にすることは避け、たまに発熱しても「身体はデトックスされている」と熱の反応も健康の証であると認識してみましょう。