魚は多くの日本人に好まれる食材です。刺身や焼き魚、煮物など、その用途もさまざまで、日本料理のほとんどに魚を使ったものが入っています。そして、魚はとても栄養成分がある食品としても知られています。

その栄養成分の代表的なものが、魚に含まれる油の種類である「DHA」と「EPA」です。これらの成分は、子供の脳の成長や、老化、認知症防止などさまざまな効果があると言われています。

また、魚は味、栄養素ともに鮮度が大切です。鮮度が良い魚は、身も締まっており、とても味わい深いものです。スーパーなどでは、頭や内臓を除いた切り身の魚が多いため、その鮮度はわかりません。しかし、魚屋さんなどで頭がついているものであれば、鮮度を見抜くことができます。

そこで今回は、鮮度の高い魚の見極め方について解説します。

見た目で鮮度をチェックする方法

鮮度を見抜く方法はいくつかありますが、通常の買い物では見た目だけで判断します。外見だけでも多くのことがわかり、だいたいの鮮度も見極められます。

例えば、頭がついている場合、まずは顔を見ます。目が透明で張り感があるものは、鮮度が良いです。一方、目が濁っており、へこんでいたり、赤かったりするものは、鮮度が落ちています。

またエラも一つのポイントです。鮮度が高いものは、鮮やかな桃赤色をしています。そして、鮮度が落ちるにしたがって黒ずんでくるため、灰色に近くなります。

また、皮膚に光沢があるものは新鮮です。この変化は、とくに「青もの」や「光りもの」と呼ばれるものに著明に見られます。新しいものにはウロコがついているとよく言われますが、ウロコに関しては漁の最中に剥がれることもあるため、何とも言えません。

このように通常の買い物でも、これだけさまざまな視点から、魚の新鮮さを見極めることができます。

鮮度に使われる「K値」

鮮度は見た目でもおおよそ判断できますが、やはりそれは予測でしかありません。そのため、昔から科学的に鮮度を測定する方法が考えられていました。かつては、味のためというより、腐敗しているかどうかを知るために鮮度の研究が行なわれていました。

そして、魚の活きの良さに使われる値として「K値」というものがあります。

これは、魚肉のエネルギー源の分解物を使ったものです。生きている間はこれらの分解物は発生しないため、理論的には0となります。活きが悪くなるにつれてK値は大きくなり、20パーセントを超えると、刺身として食べることができないと言われています。

K値が70パーセントを超えると、細菌が繁殖して腐敗し始めています。死後直後は5パーセント前後です。

K値の変化は、魚の種類によって大きく異なります。例えば、タラは死後2日目に60パーセント近くにも上がりますが、カツオは同じ死後2日目でも20パーセントに満たず、刺身で食べることができます。

以下に各処理方法によるK値の目安を記載します。

活き作り:5パーセント以下
刺身:20パーセント以下
すし:40パーセント前後
焼魚:60パーセント以下

魚は新しいものほど好まれますし、確かに刺身などは新鮮であるほど美味しいです。しかし、新鮮であれば美味しいのかというと、そうではありません。

とくに死後直後は、「乳酸」と呼ばれる物質の濃度が高く、魚肉は酸性に傾いています。また、魚のうま味成分である「イノシン酸」は、死後直後ではなく、死後硬直が始まった後に増え始めます。そのため、うま味という視点からすると、鮮度が高ければ良いというわけではないのです。

つまり、その魚の種類や用途によって、必要な要素は変わってくるということです。味や見た目、栄養素などさまざまな視点から、魚を使うタイミングを考慮することが大切です。

魚がおいしくなり、栄養が高まる「旬」について

また、食材の栄養について考えるとき、鮮度以外にも「時季のモノ」を知っておくことが大切です。その食べ物には、適した土地や気候、季節などがあります。そのような条件を多く満たしたものは、栄養価も高く、味も美味しくなります。

これは野菜でも、魚でも同様です。「地産地消」という言葉があります。これは、野菜によく使われる言葉ですが、他のどの食材に対しても使用できます。

地産地消はその土地で摂れたものを、その時季にいただくという考え方です。確かに都会などでは、全てが地産地消ということは難しいかもしれません。

しかし、あなたが生まれた育った土地の食べ物は、あなたの体にも合っているはずです。田舎から都会に出た場合、実家から送ってもらった野菜などは特別美味しく感じるものです。そこで、「魚の旬」に関して述べたいと思います。

「旬のモノ」は味が良い

魚を美味しくいただくために、鮮度の高い魚であることは大切なポイントです。そして、もう一つ、「旬の魚」であることも、魚を食べる上でとても重要になります。旬とは、食べ物が熟して、最も味の良いときのことを言います。

野菜にもそれぞれ旬の時季があるように、魚にも味が美味しくなる期間があります。そのときに獲れた魚は味だけでなく、栄養価も高いです。

魚の旬は、産卵時期と関係していると言われています。産卵期は、産卵のために栄養分が精巣や卵巣に集中するため、魚肉の味は落ちます。逆に、産卵期の直前は、エサを十分に食べて、魚肉にたくさんの栄養がいきわたっているため、味が美味しく、栄養価も高いです。

また、産卵直後は、脂肪分が少ないため水っぽくなります。しかし、時間が経ち、体力が回復すると、肉の栄養分は十分戻って味も美味しくなります。つまり、魚の旬は産卵期の前か後ということです。そして、産卵期は魚の種類によって異なるため、それぞれ旬が違います。

例えば、サバの旬は秋であり、このことは誰もが知っていると思います。秋サバはとても脂がのっており、美味しいものです。また、サンマやイワシも、秋が旬の魚だということは有名です。

このように時季によって、それぞれの魚の旬があります。旬の魚を食べた方が、美味しく栄養価も高いので、できるだけ旬のモノを食べるようにしてください。

地域によって旬の時季が異なる

魚の旬は、基本的には産卵期に関係しています。しかし、産卵期と重なった時季が旬とされる魚もあります。例えば、サワラは春に産卵しますが、旬も春です。同様に、夏に産卵するハモやキス、イサキ、カワハギ、秋ではサンマなどがその例として挙げられます。

また、一番漁獲量が多く、市場に出始めた時季でおいしいものを旬ということもあります。そのため、旬は地域によっても異なるということです。

地域によって気温や湿度、海水の性質などさまざまな要素が異なります。そのため、場所によって魚の味が違うのは当たり前ですし、旬の時季が変化するのも納得できます。

このように、産卵期だけにとらわれず、いろいろな要因で、魚の旬は決められています。以下に一般的に言われている、時季別の旬な魚をまとめます。

春:サワラ、タイ、トビウオ
夏:キス、イサキ、ハモ、スズキ、カワハギ
秋:サンマ、サバ、イワシ
冬:ブリ、タラ、アンコウ、フグ

このように、魚には産卵期に応じた旬があります。しかし、その時季は魚の種類や獲れた地域によって異なります。さまざまな要素によって旬は変わりますが、共通して言えることは、その魚が美味しい時季が旬であり、栄養価が高いということです。

そのため、あなたが住んでいる地域での旬を知り、美味しく栄養の高い魚を食べように心がけてください。

魚の味を作り出している成分:グルタミン酸、イノシン酸

それでは、魚の味はどのようになっているのでしょうか。

魚のおいしさは多くの要素から成り立っており、単純に1つの要因で説明することはできません。味や食感、温度など、さまざまな因子が複雑に影響し合っています。そこで、魚の「うま味」について解説します。

魚の生臭さ

魚肉と食肉の味は全く異なります。その要因の1つとして、脂肪の質の違いがあげられます。また、筋肉の構造にも相違があり、食肉にはゴリゴリした「スジ」がありますが、魚肉にはほとんどスジがなく、あってもそれは柔らかいものです。

魚肉の味には、魚肉に含まれるエキス成分のうち、種々のアミノ酸、イノシン酸、タンパク質が分解してできるペプチド、ナトリウムなどが関係しています。そして、魚肉の脂肪や油は、おいしさにコクと厚みを与えます。

エキス成分は、水に溶けやすいという性質があるため、味の良いスープとなります。熱したときに出るアクは、肉の中のタンパク質が凝固したものです。魚の生臭さはこのアクに吸収されていきます。そのため、魚の生臭さを無くすためには、アクをすくい取ることがポイントとなります。その他にも、味噌などの調味料によっても魚の生臭さを隠すことができます。

魚の鮮度について

魚は鮮度が大事だとよく言われます。確かに、新しい魚はおいしいと感じます。魚の死後直後は、肉が柔らかいです。しかし、すぐに死後硬直を起こすため、コチコチに硬くなります。そのとき魚の体はアルカリ性ですが、硬直を起こすと、肉の乳酸によって、わずかに酸性の状態になります。

魚のうま味成分は、先ほど述べたエキス成分の中でも、「イノシン酸」が主に担っています。また、イノシン酸は、よく知られるうま味成分の一つである「グルタミン酸」と一緒に存在することで、さらにうま味が強化されます。

魚は死後硬直に入ると、イノシン酸やグルタミン酸などのうま味成分が増加します。それに比べて、鮮度が高そうなイメージがある、死後直後はうま味成分が少ないです。

そのため、活きづくりなどあまりに新鮮な魚は、うま味の成分自体は高くありません。新鮮な状態が美味しい刺身などは、うま味よりも、あの「プリプリ」した食感を味わうものだということになります。

また、鮮度や味が低下するスピードは、魚種によって異なります。例えば、サバやイワシは鮮度の落ちが速い魚です。一方、マダイやチヌ、クロダイ、などタイの仲間は鮮度落ちが遅い魚になります。そのため、少々古くても味は保たれます。

漁獲した魚は内臓を除いた後、氷詰めにすると、ハマチで4時間、マダイで28時間、ヒラメで2日間後に硬直が最大になります。

しかし、死後硬直が始まる時間や硬直持続時間は、魚の種類だけでなく、魚の大きさや保存温度、死に方、生きているときの栄養状態によっても異なります。魚を美味しくするために、硬直までの時間や、硬直の持続時間を長くするような工夫が行なわれています。

一方、ホタテ貝などの貝類やイカ、タコなどはイノシン酸が蓄積しません。そのため、それらのうま味を出しているのは、イノシン酸ではありません。

貝類やイカ、タコなどのうま味をつくっているのは、「アデニル酸」と呼ばれる物質です。アデニル酸も、イノシン酸と同様に、グルタミン酸と共存すると強いうま味を生み出します。貝類などは、死後にアデニル酸が蓄積することで、おいしくなるということです。

白身の魚と赤身の魚の違い:赤身に含まれる栄養素

こののように、魚の味は、魚肉に含まれるエキス成分によって作られます。また、その特徴は魚の種類や大きさなど、さまざまな要素で変化します。それぞれの魚の性質を知り、適切な処理をすることで、美味しい魚料理を作ることができます。

さて、魚にはマダラやスズキのように身が白色の魚と、カツオやマグロのように赤色をしている魚がいます。また、サバやイワシなどはその中間にある魚(青魚)です。この色の違いは、肉の質による違いです。

肉質の違いによって味や食感、栄養素などさまざまな要素が異なります。離乳食で使われるのが「白身の魚」であるは、中に含まれている成分に原因があります。そこで今回は、白身と赤身の違いについて解説します。

血合肉(ちあいにく)とは

魚の体側には、わずかに赤褐色の部分があります。ここは「血合肉(ちあいにく)」と呼ばれる筋肉になります。その他の、色の薄い筋肉は、「普通肉」と言われます。

この血合肉の発達具合によって、白身か赤身かが決まります。マダラやスズキでは、血合肉の部分が少ないため、白身魚になります。一方、カツオやマグロでは血合肉が発達しているうえに、普通肉も赤い色をしています。このような魚は赤身魚と言われます。

血合肉も普通肉も赤い部分がありますが、この赤色は「ミオグロビン」と呼ばれる色素によって作られます。

また、一般的には、赤ちゃんの離乳食や病人には、赤身魚より白身魚を食べさせます。これは、赤身魚は油を多く含み、酸化されやすいという性質があることが原因です。また、赤身魚に含まれる成分は、鮮度が低下するとアレルギー様の症状を引き起こしやすいということも理由の一つです。

血合肉には栄養が豊富に含まれている

スーパーなどでカツオなどを買うとき、同じカツオでも血合肉部分が少ない魚を選ぶのが普通です。血合肉は色が黒っぽいことや、鮮度が速く落ちることから嫌われます。

実際、血合肉と普通肉にはどのような違いがあるのでしょうか。これは、血合肉が多い魚の特性とも関係しています。血合肉が発達しているカツオやマグロは、長時間泳ぎ続けています。一方、ヒラメなどの白身魚は、エサをとる際に、瞬間的に動くことが多いです。

そして研究によって、血合肉は平常泳いでいるとき、普通肉は急激に動くときに使われる筋肉であることが明らかになりました。

つまり、血合肉の発達は、普段の活動様式によって決まるということです。

また、血合肉は赤色をしていますが、これは先ほど述べたミオグロビンというものと、「ヘモグロビン」によって作られる色です。そして、これらの色素には、体に吸収されやすい「鉄」が含まれています。そのため、赤身魚は、鉄分の補給に最適です。

さらに、血合肉にはEPAやDHAなどの「必須脂肪酸」と呼ばれる脂肪分や、ビタミンA、E、B群などが豊富に含まれています。

必須脂肪酸は、体内で合成できない脂肪酸です。その中でも、EPAやDHAは特に大切で、脳の発達を促したり、炎症を抑制したりします。ビタミンは、脂質やタンパク質などの代謝をスムーズにします。

タウリンの働きを知る

他にも、血合肉には、「タウリン」と呼ばれる硫黄を含む成分がたくさん入っています。通常、タウリンはイカやタコ、貝類に多く、魚肉の普通肉にはあまり含まれていません。

しかし、血合肉にはイカやタコに匹敵するくらいのタウリンが入っています。タウリンには、肝臓の機能を高めたり、コレステロール値を下げたりする作用があります。アルコールを飲むときのツマミとして、イカやタコ、カツオが勧められるのはこれが理由です。

またタウリンには、他にも以下のような作用があります。

・動脈硬化の予防
・高血圧予防
・視力の回復
・むくみの予防、改善
・便秘の解消

今回述べたように、白身魚、赤身魚には味の違いだけではなく、含まれる栄養素にも大きな違いがあります。古くなりやすいために嫌われがちな血合肉ですが、実は赤身魚の栄養分は、血合肉部分に豊富に入っているのです。

しかし、酸化しやすいというのも事実ですので、赤身魚はできるだけ新鮮なうちに食べるように心掛けてください。