体の3大栄養素が、「糖質」、「タンパク質」、「脂質」の3つであることは、あなたが知っている通りです。そして、糖質は重要なエネルギー源であり、「脳にとって糖分は不可欠な栄養素」と言われており、多くの人が体に必要な栄養だと認識しています。

また、タンパク質も、体の組織や筋肉を作る上で大切なものだと言われています。そのため、糖質やタンパク質は、体にとって必要不可欠であるというイメージがあると思います。

一方で脂質は、「コレステロール値が上がる」、「血液の流れを悪くする」など体にとって悪いイメージが多いのではないでしょうか。また、美容の面からも、「脂肪を摂ると太る」、「ニキビができやすくなる」など、脂肪は悪いものとされています。

確かに、肥満は生活習慣病につながりますし、脂質を摂りすぎると、肥満を招くことも間違いではありません。

しかし、人の体にとって脂肪は、じつにいろいろな意味で、絶対不可欠なものです。それは、体の構造面でも機能面でも言えることです。脂質がなくては、人間の体は、維持できません。そこで今回は、脂質が体にとって必要な理由について解説します。

脂質の役割

脂質は、基本的に「油脂」の形で、体内に取り入れられます。体には、脂質を作りだす機能もあります。ただ、脂質の中には体内で合成できないものもあり、外から補う必要があります。

体にとっての脂質の役割は、主に「エネルギー源」と「体の構造の元」の2つがあります。

体が動くためには、エネルギーが必要です。これは、筋肉でも内臓でも同じです。そのエネルギーの源となるのが脂質です。一般的に、エネルギー源と言うと、「糖質」というイメージが強いと思います。

しかし、通常の生活レベルで、主にエネルギー源として使用されているのは、脂質です。

この2つの違いは、その貯蔵量にあります。糖質は、グリコーゲンなどの形で体に蓄えられています。そして、それらを分解することでエネルギーを作り出します。しかし、このグリコーゲンの量は限りがあり、グリコーゲンだけでは、一日すらもたないとされています。

一方、脂質によってエネルギーが作られる場合は、脂質だけでも数ヵ月間動けるくらいの貯蓄があるとされています。さらに脂質は、体を作る細胞や、体の機能の維持に欠かせない「ホルモン」の原料になります。そして、思考や精神を司る脳の細胞も、その60パーセントは脂質からできています。

以上のように、体の構造面にとっても機能面にとっても、脂質はとても重要な栄養素と言えます。

「油は太る」という考えは間違っている

脂肪(油)を摂ると太るというイメージは、多くの人がもっているものです。しかし、この考えは間違っています。先ほど述べたように、脂質は体にとって必要不可欠なものです。そのため、「脂肪=悪者」という思考は正しくありません。

しかし、確かに脂肪は、摂る種類や取り方によっては、体にとって悪影響を与えるのも事実です。悪い油を摂取すると、体の細胞や脳などに影響し、病気のもととなります。

そのため、脂質を正しく選び、摂取することが健康のためには欠かせません。

そこで問題になるのが、「脂肪は太りやすい」という考え方だといえます。これは、それぞれのカロリーが、「糖質は1グラムあたり約4キロカロリーであるのに対し、脂質は1グラムあたり9キロカロリーである」という考えから生まれるものです。

しかし、体内での代謝は、このような単純なものでは説明できません。カロリーが高いのは事実ですが、脂質は体内で最も効率的に利用されやすいのです。

脂質が体の脂肪になるのは、糖質の助けがあるからです。糖質は、体に脂肪をため込む作用がある「インスリン」というホルモンの分泌を促します。そのため、糖質は体に脂肪をつけやすくするものだと言えます。

一方、脂肪にはそのような作用はありません。余った脂質は、確かに脂肪細胞に蓄えられますが、それも必要に応じて分解され、エネルギーとして使われます。つまり、太る原因は脂肪ではなく、糖質にあるということです。

脂質を摂っても太らない理由

このように、脂質は体にとって必要不可欠なものです。また、脂肪は太りやすいというイメージがありますが、これは正しくありません。むしろ、脂質より糖質の方が、肥満の原因になります。

つまり、このような脂質に対する正しい知識をもっていないと、無駄に脂肪を避けることで、健康を害することになりかねないということになります。

それでは、なぜ油(脂質)を取っても太らないのかについてより深く確認していきます。

カロリーの高さから、脂肪は「太りやすい」というイメージがあります。そのため、ダイエットをしている人や健康に気を使っている人の多くは、できるだけ脂質の摂取を避けようとします。確かにカロリーだけで考えると、脂肪は炭水化物やタンパク質の2倍以上のカロリーがあります。

しかし、カロリー自体の概念をそのままダイエットの理論にあてはめるのは間違っています。カロリーの計算では、食べ物を燃やした後の残りカスを使って産出されますが、人の体の中で起こる反応は、そんなに単純なものではありません。

脂肪は体内でどんどん利用されるため、いくらカロリーが高くても、体内の脂肪を増やす原因にはなりません。

脂質は体を動かすエネルギーとなる

内臓が働き、体を動かすことによって人は生命を維持しています。内臓にしても筋肉にしても、それらが運動を行うためにはエネルギーが必要です。脂質はそのエネルギー源になります。

脂質のうち、体内でエネルギー源となるのは「中性脂肪(トリグリセリド)」のみです。中性脂肪は、胃や膵臓から分泌される酵素によって、グリセロールと脂肪酸に分解されます。

脂肪酸は血液中で遊離脂肪酸と呼ばれ、血中に放出された後はタンパク質に吸着されます。つまり脂肪は、血液という水路をタンパク質という船に乗って全身を巡るということです。

この過程で使われなかった遊離脂肪酸は、再び中性脂肪となり、脂肪細胞に貯蔵されます。そして、また体がエネルギー不足になると遊離脂肪酸に分解され、エネルギー源として使われます。

中性脂肪は、体のエネルギー源の貯蔵庫です。そのため、脂肪は嫌われる傾向にありますが、ある程度の脂肪がついていないと、エネルギー不足になります。もちろん、脂質は摂りすぎれば肥満につながります。しかし、そのことを考慮してでも、脂肪は体にとって必要だということを理解しておくことが大切です。

ケトン体というエネルギー源

実は、体内でエネルギー源として利用されるのは、遊離脂肪酸だけではありません。脂質に含まれるさまざまな脂肪酸は、リンパ管や静脈を通ったり、直接的に肝臓に運ばれたりします。

そして、そこで「ケトン体」という物質に変換されます。このケトン体もエネルギー源として利用されます。

脳のエネルギーには、ブドウ糖が利用されることが知られています。しかし、脳はケトン体もエネルギーとして使うことができます。つまり、脂質は脳のエネルギー源にもなりうるということです。

エネルギー源としてブドウ糖しか利用できないものは、「赤血球」だけです。それ以外の臓器や組織は、すべて遊離脂肪酸やケトン体で活動することができます。

このように人の体は、何重にも作られた機能によって、エネルギーを作れるようにできています。そして、その中でもっとも重要な役割を担っているのが脂質ということです。

一般的に嫌われる脂肪ですが、体にとっては欠かせないものです。また、体内に入った後に脂質がどんどん利用されるため、ある程度であれば、脂質を摂っても太ることはありません。ただ、「いい油を摂る」というのが前提ですので、普段使う油には良質のものを使用することが大切です。